やさか

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5/1/2023, 12:01:58 PM

 そこには、この世で目にした色が全部あった。
 どんな白も、どんな黒も、どんな赤もどんな青も。
 君の瞳の色、君の爪の色、君の勝負ワンピの色。
 あの日の夜空の色、星の色、咲いていた花の色。
 全部覚えていた。全部、僕の中に残っていた。
 目を閉じる僕を覗き込んで泣いた、君の涙の色も。  


 #カラフル

4/30/2023, 1:53:29 PM

 どこか淡い色の光の中で、やさしい花の香りが涼しい風に漂っていて、ささやかに鳥が鳴き交わす木陰に、雨は絹のようにさらさらと降り……。
 わたしはそんな楽園にいたことがあるんだよ、と彼女が笑う。
 僕が、どうしてずっとそこにいなかったの、と尋ねると、彼女はもっと笑う。
 彼女はただ、君がいなかったからさ、と言う。
 そうして、幸せそうに笑っていた。ここが楽園だっていうみたいに。


 #楽園

4/29/2023, 2:00:19 PM

 ひんやりと湿った風だった。
 水の匂いのする曇天に、遠雷が聞こえる。
 飛び立つなら、こんな日がいい。
 翼も箒もない。それでも飛べると信じるには、逆巻くような嵐の予感が要る。
 雨粒を蹴り、稲妻を足がかりに、逆風に乗る。
 だから、今日。
 わたしは空をぐっと睨みながら、待っている。
 わたしの乗るべき風を。嵐を。その訪れを。


 #風に乗って

4/28/2023, 11:05:37 AM

 夢の中にだけある、音のない声がある。
 その色と響きを、どうしても覚えておけない声が。
 どこにもない、誰でもない。
 なのに、それはどこか、過去を思い出させる。
 あの日、届かなかった一瞬を。
 わたしの前を刹那に駆け抜けていった、恋の面影を。
 どうしてか。どうしてか。


 #刹那

4/19/2023, 11:57:25 AM

 あなたのお葬式の様子が見たい。
 たくさんの人に囲まれた式でもいい。家族だけを集めた、ささやかなものでもいい。
 ただ、もしも。
 もしもその時、あなたの死を悲しむ人が、誰もいなかったら。
 そうしたら、わたしは意地でもその時まで生きて、あなたの棺の前でわんわん泣こう。たとえ百歳の婆さんになっていてもそうしよう。
 今、そしてこの先に、わたしがあなたの隣にいなくても、ずっと、ずっと、あなたのために泣けるわたしでいると約束しよう。これは、未来が見えなくても。


 #もしも未来を見れるなら

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