やさか

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 ひんやりと湿った風だった。
 水の匂いのする曇天に、遠雷が聞こえる。
 飛び立つなら、こんな日がいい。
 翼も箒もない。それでも飛べると信じるには、逆巻くような嵐の予感が要る。
 雨粒を蹴り、稲妻を足がかりに、逆風に乗る。
 だから、今日。
 わたしは空をぐっと睨みながら、待っている。
 わたしの乗るべき風を。嵐を。その訪れを。


 #風に乗って

4/29/2023, 2:00:19 PM