もどかしいような、くすぐったいような、切ってもきれないもの。私を縛り付けて放さない。息苦しさを感じるときもあるけれど、私にとっては、大事なもの。
『絆』
たまには休んだっていいじゃんか
そんな一言でやめられるんなら、もうとっくにやめているんだよなぁ
『たまには』
君に相応しい男になるって息巻いたくせに、全然そんな風にはなれそうにないや。やる事なす事全部が不安に思えてくる。やりたい事をやってても「こんなの意味ないんじゃないか」って捻くれた私がやる気を削いでいく。カッコつけて、離れていった自分が嫌になる。このままで本当にいいのかな。弱音を吐くことしかできない自分が憎らしい。それでも、もうやるしかないから。重い腰を無理やり上げて自己鍛錬に励む。苦しんでる暇なんかない。お前にそんな資格はない。お前なんかのためじゃない。アイツのために、一歩でもいい。何でもいいから前に進め。
『大好きな君に』
「どうなってるんだよ……」
いつも通り起きて、気怠げに入ったバイト先は、戦場かと見紛う程大荒れだった。
「悠馬、待ってたよ」
涼太が普段絶対にしないような満面の笑みでこっちに微笑んでいる。不気味すぎる。
「何でこんな荒れてんの?」
手を洗いながらそう尋ねる。
「いや、ひな祭りだよ。テイクがもうやばい」
「あー、成程……」
家とバイトの往復しかしてなかったせいで、日付の感覚が完全に抜けてた。
「マジかよ、休みにしとけばよかった」
「そんなこと言うなって。夜飯にちらし寿司食おうぜ」
作業台の方をチラッと見ると、山のように積まれたちらし寿司。ほぼ確実にロスだな。
「よし、じゃあさっさと終わらそ」
涼太はそれを聞いて満足気に頷く。
「じゃあ俺テイク捌いてくるから、悠馬は注文見てて」
「は? あんだけあって足んないの?」
「じゃあそっちは任せたよ」
涼太はそう言ってさっさと作業に戻って行った。仕方ない。やるか。溜め息を吐き、キッチンという戦場に乗り出した。
『ひなまつり』
スマホが震えると、どうしようもなく胸が高鳴ってしまう。違うって、わかってるのに。あなたからのメッセージを欲しがっている。大人になりきれない自分を抑えられない。もういっそ、スマホを開くのを止めようかな。見てしまったら、あなたじゃないって現実に向き合わないといけないから。こうやって無視してるうちは、差出人があなたの可能性も、まだ0じゃないから。
『たった一つの希望』