あじゅ

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4/23/2025, 9:57:17 PM

君を探して何千里。街を抜け、国を跨いで、海を渡る。記憶を描き、君へ贈れる手土産にして。増え続けるキャンバスを背負って、今日も歩く。この世界に君がいなくても、焦がれる事を止めるなんてできるハズもないから。君の面影と、出会えるもしもに賭けるのだ。だってほら、世界は今日も美しい。絵筆で切り取るその瞬間にも、意味があって当然なんだ。踏み出す先は未知で、素晴らしい。
さあ、今日はどこへ行こうか。

4/23/2025, 10:15:41 AM

恋は泡沫、刹那の夢だ。池にきっかけという石が落ちて、好きな気持ちが波紋となって広がり、何事もなかったみたいにただ元に戻る。恋って結局、そんなもの。
風が吹いても石が落ちても、最後は凪いだ私のまま。積もった経験は、私の体積を増やしはしても、私の形を変えたりしない。
それは突然、何の前触れもなく訪れた。大きな物音とともに、岩が沈む。浸かりきらない岩肌が私を押しやって、


big love!

4/19/2025, 9:45:42 AM

運命的な出会いとか、雷が落ちるような衝撃だとか、そんな物語の冒頭みたいな事なんてない。ただ偶然に、そこに在っただけの、どこにでもあるどうしようもない始まりだった。
同じクラスの、隣の席の、地味で人見知りな真面目ちゃん。第一印象はたったそれだけ。正直相容れない存在だと、嫌煙すらしていた。それなのに……。
(何で、好きになっちゃったかなぁ…)
授業中、くだらない先生の話を右から左へ聞きながしながら、そっと隣に視線を送る。飾り気のないシャープペンシルがカリカリと音を立てながら、僅か5ミリの罫線の隙間に黒い跡をつける。ピンと伸びた背筋に、伏せられた長い睫毛。器用に編み込まれた髪の毛は、一見地味で何でもないようなのに、気づいてみるとこんなにも美しい。校則を破らず、いっそ守り過ぎているはずの彼女は、この学校という箱庭の中で一等綺麗だった。
ふと自身の髪に手を当てる。高いお金をかけた胡桃色は、手間に反して痛みが見える。長く整えた爪先の小さなラインストーンが、窓に映る瞼と同じ輝きを放っている。
清楚とギャル、優等生と不良。交わらず、決して分かり合えない存在。私は私を曲げられないし、あの子が変わるハズもない。わかっているのは、もう何もかもが手遅れだということだけ。

4/10/2025, 5:24:15 AM

「離れていても、心は一つ」みたいな、気休めの言葉が大嫌いだった。手に入れては失って、出会っては別れた。短い触れ合いは、情を持てば持つほどに毒となって身体を蝕む。親の転勤だなんてどうしようもない事に、一体どれ程の苦しみを味わえば良いのか。
新しい学校。新しい仲間。知らない場所なのに、見知った場面。今回はどれだけの間居られるのだろうか。不安なんてない。どうせ一時的に所属するだけの空間で、良いも悪いも関係ないんだ。
「そう、思ってたんだけどなぁ…」
転入して半年、親友が出来た。そう、出来てしまったのだ。表面的な付き合いだけしようと、常々思っていたはずなのに、だ。押しが強くて、無神経で、その上無遠慮でお節介。お調子者で、馬鹿だが運動神経の良いあいつと、外面ばかりで、頭は良いが運動のできない僕。凹と凸が噛み合うような、パズルのピースがぴったりはまるみたいな、そんな存在。ほんの少ししか一緒にいなかったくせに、隣にいないのが考えられなくなっていた。
それから、たった3ヶ月でまた引っ越しが決まった。もう何年前か、幼かったあの時みたいに泣いてしまった。1年にも満たないあいつとの生活が、こんなにも大きくなって、僕を包んでいた。
あれからもう、随分とたった。結局、僕らは離れ離れになったんだ。たった9ヶ月間の交流は、僕の心に穴を開けるのには充分だった。それからもう、あいつには会っていない。連絡もとれない僕らに、出会う機会もなかった。大学を出て、会社という新たな場所へ旅立つ今、あいつは何をしているのだろうか。
「元気かな、あいつ」
早咲きの桜が、静かに揺れていた。

4/8/2025, 11:34:49 PM

それは何の変哲もない、至って普通の日の事だった。いつも通りの朝が来て、なんてことない礼拝をして、窓から森へ抜け出した。そんな繰り返しの中の、ほんのちょっとのイレギュラー。木漏れ日を浴びて輝く、一人の少女。出会いはきっと、偶然だった。
ミキは、お転婆やじゃじゃ馬という言葉がとても似合う少女だった。走って、転んで、怪我をして、泥だらけで笑う姿が、不思議と綺麗だったんだ。それは憧れか、羨望か、兎に角焦がれるその感情は、恋と呼ぶのに相応しい色を放つ。
君が遠くに行ってしまうと知ったのは、春も終わりの頃だった。過ぎる時間の無常さに、悔しさで息が詰まったものだ。生まれて初めて嘘をついて、君へのプレゼントを用意した。春を思わせる淡い色のラッピングは、何処となくあの子に似ている。
結局、プレゼントを渡すことは出来なかった。簡単な話、怖じ気づいてしまったのだ。それからというもの、僕はあの森へは行っていない。今までと何ら変わらない日々の中で、君への後悔と悲しみだけが確かだった。
僕はずっと、忘れないだろう。あの時、あの場所に君が居たという事を。そして再会の約束をした、森の中の箱庭のような花畑の色を、この胸に抱え続けるのだろう。

いつか、遠い約束が叶うその日まで。

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