太陽が張り切ってギラギラ輝いている青空。
今日も神の仕事として、地上の困っている声を聞くことにしよう。
雲の上から耳を澄ますと、沢山の声が聞こえてくる。
「はぁ……最近ずっと不景気だよな。神様なんとかしてくれねぇかな」
「ギャンブル負け続けで金が尽きそうだから、金降らせろよ神」
「神様おねが〜い!金持ちで超豪邸に住んでいるイケメンと出会わせて〜!」
……困っているというより、自分勝手なわがままな声ばかり。
うっとしいので、雨雲を呼び、雨と風と雷を起こして黙らせた。
空を飛びたくなるほどの快晴の空。
今日は親友と遊ぶ約束をしていて、駅前で待ち合わせをしている。
まぁ男同士だし、その辺をぶらぶらするだけだけど。
それにしても、急に遊ぼうって言ってくるなんて珍しいな。
「遅れてごめん!待った?」
「いや、ぜんぜ……ん?」
声を掛けてきたのは、ワンピースを着た短髪の声が低い女性。
声は親友に似ているが、見た目は全く違う。
「あの……人間違いですよ」
「ううん。合ってる。俺だよ。俺」
「へ?」
よーーーく顔を見ると、化粧をしているが、親友の顔のような違うような……。
「もう!俺だってば!」
「へ?あ、え?ま、マジで?」
「マジで」
「いや、お前、男だろ?」
「ううん。実は性別女なんだよ」
「……マジか」
「うん。マジ。因みに、こんな格好するのは十年以上ぶり」
「なんで今更そんな格好をしたんだ?」
「えっと……その……女として見られたかったから」
親友は手をもじもじしながら答える。
……整理すると、俺は親友のことをずっと男と思っていたが、実は女で、女として見られたかったから十年以上ぶりにワンピースを着てきたってことか。
普段Tシャツとジーパン姿の親友が、化粧をしてワンピースを着るだけで、こんなに変わるとは……。
「女としての姿を見せるのは君が始めて。あ、他の男友達には言わないようにね。二人だけの秘密だよ」
「お、おう」
「じゃあ遊びに行こ!俺……私、お腹空いちゃった!」
親友は、すっかり女になってしまっている。
その辺をぶらぶらするって予定だったけど、計画を立てたほうがよさそうだ。
複雑な気持ちになりながら、女の親友と遊びに出掛けた。
優しさだけで、きっと世界は変わるはず。
だけど、現実はそんなに甘くはない。
優しさだけで世界が変わるなら、もうとっくに変わっている。
どうしてこんなに世界は複雑なのだろう?
まったく、神様は複雑な生き物を産み出してくれたもんだ。
……まぁ、それが俺達人間だけども。
でも、優しさだけで世界を変える方法がきっとあるに違いない。
その方法を探すために、俺は世界中を旅している。
先に俺がくたばるか、方法が見つかるか、どっちだろうな……。
残り少ない余命を背負いつつ、次の街へ旅立った。
目の前に広がるモノクロの世界。
この世界は、すごく塗りがいがありそうだ。
パレットに絵の具を出し、絵筆で絵の具を付け、世界に色を塗っていく。
だんだんと私色に染まっていく世界を見て、胸が高まる。
でも、一つ気をつけないといけない。
世界が色を気に入らなければ、世界ごと消えてしまう。
今までも私が塗った色が気に入られず、世界は消えていった。
さて、今回はどうかな?
色鮮やかでカラフルになった私色の世界。
だが、少しずつ色が溶けていき、世界は消えていってしまった。
どうやら、この世界も私が塗った色が気に入らなかったようだ。
絵の具セットを鞄に入れ、旅立つ準備をする。
私の色を気に入ってくれる世界はあるのだろうか?
何度か色を変えようと考えたが、やっぱり私は今の色がいい。
諦めず、次も私色に塗っていこう。
鞄の紐をギュッと握り締め、次の世界へと向かった。
幸せな時間がずっと続く空間。
現実から離れたこの場所が、私の楽園なのだ。
ここなら嫌なことを考えなくていいし、シャットダウン出来る。
叶うなら、このままずっとここに居たい。
ピコーン!
スマホからメッセージが届いた通知音が鳴る。
うわぁ……現実が来てしまった。
恐る恐るスマホ画面を開く。
『休みの日に悪いが、今日の担当者が体調不良で休みになったから代わりに来てくれないか?』
はあ……今日はゆっくり楽園に居れると思ったのに。
「分かりました。すぐ行きます」
渋々メッセージを入力し、送信する。
着替えて、軽く化粧してから行こう。
私は楽園という名の自分の部屋を出て、職場へ向かった。