何の色にも染まっていない無色の世界。
俺の居た世界が嫌い過ぎて、何もかも消えてしまえと神に願ったら本当に消えてしまった。
色がない、音がない、誰もいない、一人だけ。
……ひとりぼっちで、こんな世界をどう生きていけばいいんだ。
まぁ、こんな世界を願ったのは俺だけども。
上を見上げても、空はない。
何も……なさすぎる。
しばらく上を見続けていると、何かが落ちてきた。
カチャンッ!
何もない世界に音が響く。
下を見て、落ちてきた物を確認する。
……ナイフだ。
刃の部分は輝いていて、何色にも染まっていない。
多分、神からの贈り物だろう。
この世界で生きていくか……命を絶つか……選べということか。
ナイフを拾い、首元に当てる。
何もない世界は逆につまらないし、一人だけじゃ生きていける自信がない。
ナイフを勢いよく引くと同時に、濃い赤が首から噴き出す。
ナイフと世界は赤く染まり、この世界は本当に誰もいなくなった。
「……はっ!?」
目を覚ますと、俺はベッドの上で寝ていた。
見慣れた自室、時計の針の音。
色と音がある、いつもの世界だ。
どうやら、俺は夢を見ていたらしい。
最近ストレスが貯まり過ぎて、あんな夢を見てしまったのだろうか?
……やっぱり、色と音がある世界のほうがいいな。
頬を軽く叩き、改めて、自分はこの世界で生きているということを痛みで確認した。
高校へ向かう途中にある、桜の木が並んだ歩道。
俺は幼馴染の歩幅に合わせて、ゆっくり歩く。
「桜、綺麗だね」
「ああ、綺麗だな」
幼馴染は桜を見て言っているが、俺は幼馴染を見て言った。
桜を見ているお前のほうが綺麗だよ……なんて恥ずかしくて言えない。
いつから幼馴染のことを、女性として意識するようになったのだろう?
多分、高校入学したぐらいからか。
幼馴染は可愛くて綺麗だから、誰にも取られたくないという気持ちが強くなったんだと思う。
「ねぇ、好きな人っている?」
「え!?」
幼馴染からの突然の問いに、声が裏返ってしまう。
「私はね……いるよ。好きな人」
幼馴染はこっちを見て、微笑む。
「だ、だだだ誰?」
「隣のクラスの田中君」
「……あー」
今度は空気が抜けていくような声が出てしまう。
隣のクラスの田中君といえば、バスケ部のキャプテンで女子からモテるイケメン。
そっか、イケメンが好きなのか……ははは……。
「魂が抜けたような顔してどうしたの?早く行かないと遅刻するよ」
「お、おう……」
ヒュ〜っと強めの風が吹く。
桜の花びらが散っていき、俺の恋も散っていった。
誰もが持っている夢見る心。
夢は、いくつでも持ってていい。
叶うかどうかは、自分自身の努力次第だけど……。
もし叶えられそうな夢が近くにあると感じたら、その夢に向かって一直線に走ればいいと思う。
ま、俺は夢を叶えられず迷走しているけどね……ははは……。
長時間掛けて入力した告白のメッセージ。
今から、高校の時同じクラスで好きだった女子に、このメッセージを送ろうと思っている。
どうして高校卒業して五年経ってるのに、今更送るかって?
それは……未練……かな。
好きだったのに言えずに卒業したから、後悔していたんだと思う。
「すぅー……はぁ……」
大きく深呼吸する。
五年ぶりのメッセージが告白だから、きっとびっくりするだろう。
よし、送信!
すると、すぐにメッセージが返ってきた。
"相手にメッセージが届きませんでした"
何度も送信するが、届かない。
……そっか、俺からのメッセージを拒否されているから届かないんだ……は、ははは……。
せっかく入力した告白のメッセージは、すぐゴミ箱行きになった。
神様へ
いつまで雲の上から世界を見ているのですか?
上から見ずに地上へ降りて、自分の足で、自分の目で、世界を歩いて見て下さい。
現状を把握して、この世界を良い世界にしてほしいです。
……そうそう、背後には気をつけて下さいね。
神様が嫌いな奴が襲ってくるかもしれませんから……けけけ。