宇宙まで見えそうな雲一つない快晴。
今日から社会人の仲間入りする俺を、祝ってくれているかのような天気だ。
始めは苦労することが多いだろうけど、頑張るぞ!
フニャッ。
何か、柔らかい物を踏んだ。
恐る恐る足元を見ると、犬のフンを踏んでいた。
空を見ながら歩いていたからだ……不覚!
ビチャッ!
上から何か落ちてきて、頭の上に乗る。
恐る恐る触ると、鳥のフンだった。
なんでこんなにフンが俺の所に来るんだよ!
朝から災難な目に遭った。
……いや、運がついたと思えばいいのでは?
しかも上下から運がついた。
今日は、きっとすごくいいことがあるに違いない。
よし!前向きに考えていこう!
だが、フンを落とすのに時間が掛かってしまい、初日から会社に遅刻してしまった。
どこまでも続く、果てしない青空。
この空なら、遠くまで飛べそうだ。
翼を広げながら、空へ向かって駆け下りる。
だが、上手く翼をパタパタさせることが出来ず、そのまま海へ落ちてしまう。
「なーにやってんだよ!へたくそ!」
空を見上げると、先輩が翼をパタパタさせながら、こっちを見下ろしている。
「す、すいません……すごくいい青空だったので、勢いで飛べるかなぁって」
「勢いで飛ぶんじゃない。慎重に落ち着いて飛ぶんだ。さぁ、もう一回やり直し!」
「は、はい!」
先輩が差し伸べてくれた手を掴み、再び雲の上へ向かう。
天使の翼の取り扱いが、こんなに難しいとは思わなかった。
いつもより緊張感が走る自宅のキッチン。
今日は彼氏が家に遊びに来ていて、今から私の手料理をご馳走するところだ。
出来上がった料理を皿に盛りつけ、テーブルまで運ぶ。
味つけ大丈夫かな……彼氏の口に合えばいいけど……。
「きゃっ!」
何もない所でつまづいてしまい、皿は割れずに済んだけど、料理が床に飛び散ってしまった。
「大丈夫か!?怪我は?」
彼氏が私の元へ来て、身体を起こしてくれる。
「私は大丈夫だけど料理が……」
床には料理が無残に落ちていて、言葉にできない。
「俺も手伝うから、一緒に作り直そう」
「う、うん……ありがと」
料理を落としたのはショックだったけど、彼氏と二人でキッチンに立って、一緒に料理を作れて、良い雰囲気になった。
目の前に広がる色とりどりのチューリップ畑。
どのチューリップも、ピンと背筋を伸ばしながら空に向かって花を咲かせている。
見ているだけで元気が貰えて、気力が湧く。
チューリップ畑の近くには桜の木が何本か立っていて、春爛漫!って感じだ。
「かーのじょっ!一人?俺と一緒に花見しなーい?」
春を堪能している途中なのに、頭が春な男がナンパしてきた。
相手にすると調子に乗るので、無視して別の場所へ移動する。
「ちっ!ノリわりぃなぁ。まっ、あんま可愛くなかったしいいや」
背後から、春男の嫌味な言葉が聞こえてきた。
言い返してやろうと振り返るが、春男はもういない。
さっきまでチューリップや桜で癒されてたのに……。
春爛漫から、春波乱になってしまった。
僕は誰よりも、ずっと優れている。
テストはいつも学年トップだし、体育も成績評価Sだ。
こんなパーフェクトな僕に、出来ないことなんてない。
「じゃあ恋愛のほうも完璧なの?」
同じクラスメイトの女子に言われ、返答出来ず言葉が出ない。
「ふ〜ん、恋愛のほうはさっぱりなんだ」
「わ、悪かったな!」
「じゃあ……私が教えてあ・げ・る」
耳元で囁かれ、思わず生唾を飲む。
こんなにドキドキしたのは、初めてかもしれない。
誰よりも、ずっと優れている僕が、ただのクラスメイトの女子に落とされるなんて……。
こんな屈辱は初めてだったが、悪くなかった。