たーくん。

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11/22/2025, 11:19:21 PM

水風船が割れたように噴き出す紅い血。
人の血って、こんなにも美しいものだったのだと、記憶として脳に焼き付いている。
しかも身内の血だから、なおさら。
服に付いた返り血が、キャンバスに絵の具をぶちまけたみたいで、まるでアートだ。
どうやら僕には芸術の才能があるらしい。
「――てるのか?――聞いてるのか?おい!」
遠くで誰かが怒鳴っている。
うるさいな……あの時の感動を噛み締めているのに。
今、狭い部屋で椅子に座らされ、問い詰められている。
「もう一度聞く、なぜ両親を殺したんだ?」
恐い顔をしながら聞いてくる刑事。
「芸術家として、すごい作品を描きたかったんだ」
何度も同じ質問をしてくるのがうざいから答えてやった。
「つまり、憎くて殺したんだな?」
「あの紅い血、すごかったなぁ」
「はぁ……会話が噛み合わん。疲れてきた。また明日聞くから、ちゃんと質問に答えろよ」
刑事は疲れた様子で部屋から出ていった。
僕は警察官達に狭い部屋から、ベッドとトイレだけが置かれている部屋へ連れて行かれる。
ふう……ようやく静かになって、一人になれた。
もう一度、両親から噴き出す紅い血を思い出す。
ずっと僕に虐待ばかりしてきた両親。
最後は芸術作品になれたのだから、僕に感謝してほしい。
まぁ、もうこの世にはいないけど。
あの紅い血、美しかったな……。
両親がいなくなって、気持ちが清々したはずなのに、なぜか涙が止まらなかった。

11/21/2025, 10:46:32 PM

床に散らばっている夢の断片。
元々は一つの夢だった。
だけど、夢が遠のいていくたびに欠けていってしまったのだ。
拾ってくっつけようとするが、鋭利過ぎて、触れるだけで指を切ってしまう。
もう元通りにすることは出来ないのだろうか?
いや、今からでもまだ……!
諦めずに、どんなに辛くても、夢に向かって走り続けた。
その結果、散らばっていた夢の断片が集まり、元通りの一つの夢に。
絶望しかけたけど、諦めなければ、夢は必ず叶うことを知った。

11/20/2025, 10:06:04 PM

ぎこちない形をした一人用のタイムマシン。
長年時間をかけて、ようやく完成させた。
形は悪いが、未来へはちゃんと行ける。
「未来がどんな風になっているか確認して来てくれ」
「ああ、任せてくれ」
趣味で作っていたタイムマシンが、まさか政府に頼まれるほどの大ごとになろうとは……。
まぁ、政府が必要な部品を調達してくれたおかげで、早く完成させることが出来た訳だが。
タイムマシンに乗り込み、未来へ旅立った。
さて、どんな未来が待っているだろう?
今より文明が進んでいて、きっと見たことがない物ばかりあるに違いない。
……それとも、AIに支配されているか。
思わず、生唾を飲む。
ワクワクするが、緊張もする。
タイムマシン内のアラームが鳴り、未来到着を知らせる。
いよいよか……。
よし、外へ出るぞ。
タイムマシンの扉を開け、外へ出ると……真っ暗で、何もなかった。
なるほど、未来は見えない……か。
もしくは、神様が我々に未来を見せないようにしているのか。
タイムマシンで現代へ戻ろうとしたが、乗ってきたタイムマシンは消えていた。

11/19/2025, 10:06:15 PM

ピューピューと音を立てながら吹く風。
自転車通勤をしている身として、風は最大の敵だ。
前へ進むたびに、風が全身を吹き抜ける。
セットした髪も空へ向かって逆立ち、台無しになってしまった。
おのれ風め……!
抗いながら会社へと向かう。
「はあ……はあ……」
会社に着いた頃には、100mを全力で走ったぐらい息切れして疲れていた。

今日は残業で、外はもうすっかり暗い。
会社の扉を開けた瞬間、外から風が入ってきて、全身を吹き抜ける。
一気に冷え、身震いしてしまう。
残業疲れにはちょうどいい風……な訳ないだろ!
帰り道も、向かい風を受けながら家へ帰った。

11/18/2025, 10:18:25 PM

薄暗い部屋で静かに火が灯るランタン。
壁には、若い時の私の影が映っている。
あの頃はヤンチャで色々好き勝手にやっていたな。
懐かしい記憶が、次々と蘇っていく。
しばらくすると、影は形を変え、太っていた中年時代の影になる。
好きな物を食べ、酒をよく飲み、女遊びをよくしていたな。
女の影が現れ、ビンタされて、痛がる私の影。
……遊び過ぎて、当時付き合っていた彼女にフラレたことを思い出す。
それから新しい彼女は出来ず、ずっと独身のままだ。
影はまた形を変え、現在の顎髭の伸ばした老人の私になる。
懐かしい記憶を見せてくれるというランタン。
色んな記憶を見せてくれたおかげで、沢山思い出したよ。
もう、心残りは……ない。
忘れないうちに、行くとしよう。
私は目を瞑り、あの世へと出発した

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