水風船が割れたように噴き出す紅い血。
人の血って、こんなにも美しいものだったのだと、記憶として脳に焼き付いている。
しかも身内の血だから、なおさら。
服に付いた返り血が、キャンバスに絵の具をぶちまけたみたいで、まるでアートだ。
どうやら僕には芸術の才能があるらしい。
「――てるのか?――聞いてるのか?おい!」
遠くで誰かが怒鳴っている。
うるさいな……あの時の感動を噛み締めているのに。
今、狭い部屋で椅子に座らされ、問い詰められている。
「もう一度聞く、なぜ両親を殺したんだ?」
恐い顔をしながら聞いてくる刑事。
「芸術家として、すごい作品を描きたかったんだ」
何度も同じ質問をしてくるのがうざいから答えてやった。
「つまり、憎くて殺したんだな?」
「あの紅い血、すごかったなぁ」
「はぁ……会話が噛み合わん。疲れてきた。また明日聞くから、ちゃんと質問に答えろよ」
刑事は疲れた様子で部屋から出ていった。
僕は警察官達に狭い部屋から、ベッドとトイレだけが置かれている部屋へ連れて行かれる。
ふう……ようやく静かになって、一人になれた。
もう一度、両親から噴き出す紅い血を思い出す。
ずっと僕に虐待ばかりしてきた両親。
最後は芸術作品になれたのだから、僕に感謝してほしい。
まぁ、もうこの世にはいないけど。
あの紅い血、美しかったな……。
両親がいなくなって、気持ちが清々したはずなのに、なぜか涙が止まらなかった。
11/22/2025, 11:19:21 PM