たーくん。

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11/2/2025, 11:38:07 PM

机の引き出しに入っている一つの標本。
幼い頃に採ってくれた蝶やカブトムシ、浜辺で採ってくれた貝殻が、当時のまま静かに眠っている。
これらは全て、幼馴染みの智也がくれた物だ。
思い出として、好きな人から貰った物として。
今も大切に保管している私だけの、秘密の標本。
でも、前日、智也は女性と手を繋ぎながら笑顔で歩いているのを見てしまった。
多分、あれはデートだろう。
私がもっと早く気持ちを伝えていれば、智也の隣には私がいたかもしれない……。
今さら後悔しても、もう遅い。
……この標本、捨てちゃおうかな?
しばらくじーっと見て、考える。
ダメだ……やっぱり、捨てられない。
これは私と智也二人の、大切な思い出が詰まった標本だから。
「はあ……」
思わず、溜め息が漏れてしまう。
標本を引き出しに戻し、閉めて鍵を閉める。
「智也を標本にすれば、誰にも邪魔されずにずっと一緒にいれるのに……」
思ったことが口から出てしまい、自分が恐ろしくなって、笑うしかなかった。

11/1/2025, 11:55:38 PM

ひんやりとした空気が舞っている朝。
布団からいつ出ようか、タイミングをうかがっている。
スマホの時計を見ると、そろそろ起きないといけない時間。
覚悟を決め、布団を捲って起き上がる。
ひんやりとした空気が襲ってきて、身体を冷やしに来た。
寒い……寒すぎる……。
おかげで一気に目が覚めてしまう。
まだ冬は来ていないのに、今こんなに寒いと、冬が来たらどうなってしまうのだろうか?
身体がカチカチに凍って動けなくなりそうだ。
まぁ、こういう寒い時にこそ……。
台所のポットでお湯を沸かし、お気に入りのマグカップにインスタントコーヒーを入れて、お湯を入れる。
コーヒーは温かさをアピールするかのように、白い湯気が宙を舞う。
スプーンで優しく混ぜたら、完成だ。
マグカップを持ち、やけどしないようにゆっくりと口を付け、コーヒーを飲む。
……温かい。
喉を通り、身体全体に温かさが染み渡る。
温かいものを飲んで、身体が温まる瞬間が好きだ。
朝はこうしてまったりするのに限りますなぁ……。
でも、まったりし過ぎて、会社に遅刻しそうになることもあるから、注意が必要だ。

10/31/2025, 11:11:41 PM

鬱陶しいほど主張が強くて照らしつけてくる太陽。
光を浴びて、地面に俺の分身である影が現れた。
影は俺が動くたびに、同じ動きをする。
……どっちが、本当の俺なのだろう?
普段は真面目に生きているが、影を見ていると、悪いことをしたくなってくる。
多分、真面目に生き過ぎて、ストレスが溜まっているのかもしれない。
影に侵食される前に、なんとかしなくては。
人が多い場所を避け、自然が多い山方面へと向かった。

10/30/2025, 10:12:59 PM

夜空で嘲笑うかのように光っている満月。
立入禁止の看板を無視し、建設途中のビルへ入り、階段を昇って最上階へ向かった。
最上階は、まだフェンスや安全柵などはない。
一歩ずつ前へ進み、落下するギリギリの所で止まる。
そして、最上階から身を投げた。
落下している感覚はあるが、周りは真っ暗で何も見えない。
落ちたら……痛いだろうな……。
痛みを感じずにそのまま──。
ドスンッ。
あれ?痛くない……?
最上階から落下したはずなのに。
落下した場所には、ゴムマットが積み重なっていた。
どうやら、これがクッションになったらしい。
空を見上げると、満月がこっちに向かって光を照らしていた。

10/29/2025, 10:13:23 PM

初めてあなたに恋した時は、小さな愛だった。
でも、日に日に愛は少しずつ大きくなっていって……抑えられなくなる。
「前からあなたのことが好きでした。私と付き合って下さい!」
大きくなった愛を、本人に伝えた。
「ごめん、俺好きな人がいるから」
豪快にフラれ、大きくなった愛が一気に小さくなり、消えていく。
はぁ……私の恋、終わっちゃった。
次の恋は、もう来ないだろうなぁ……。
だが、数ヶ月後に好きな人が出来て、再び小さな愛が生まれる。
今度こそ恋を実らせるため、小さな愛を大きくする日々が始まった。

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