たーくん。

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8/21/2025, 10:24:26 PM

木々から太陽の光が差し込んでいる遊歩道。
まるで光のカーテンのようで、すごく神秘的だ。
「どうしたの?急に立ち止まって」
一緒に歩いていた妻が、横から俺の顔を覗き込む。
先週、俺達は結婚式を挙げたばかり。
結婚して、妻と一緒に住み始めてから、全てが新鮮に感じた。
「太陽の光が綺麗だなぁ……って」
「ふふ、そんなこと言うなんて珍しいね」
「結婚して幸せだからだろうな。こうして二人で歩いてると、いつもの道が違って見えるよ」
「もう……会社に遅刻するから早くいこっ」
妻は逃げるように光のカーテンをくぐっていく。
「おーい!待ってくれよー!」
離れていく妻を急いで追いかける。
俺も光のカーテンをくぐり、君と飛び立つ。
今日という、新しい道へ……。

8/20/2025, 10:20:50 PM

夕陽の光でオレンジ色に染まっていく世界。
その世界を、私は教室の窓から見ていた。
オレンジの世界に、二つの影がくっ付きながら伸びている。
影の持ち主は、同じクラスの川田君と阪井さん。
楽しそうに手を繋ぎながら歩いていて、すごくラブラブだ。
私は、川田君のことが好きだった。
「俺、好きな人がいるから。気持ちに答えられなくてごめんな」
この前、思い切って告白したけど、見事にフラれてしまう。
川田君の好きな人って、阪井さんだったんだ……。
フラれて辛い気持ちだけど、相手が阪井さんで納得する。
阪井さん、可愛いもんなぁ……。
私は、きっと忘れない。
川田君を好きになったこと。
川田君にフラれて辛い気持ちになったこと。
「私の告白を断ったんだから、ちゃんと幸せになってね」
私は、オレンジ色の世界を歩く二人の姿を窓から見送った。

8/19/2025, 10:15:39 PM

「なぜ泣くの?」と聞かれたから、あなたの言葉に傷ついたと答えた。
だけど、本人は悪いと思っていないみたいで、首を傾げている。
「言葉はね。時には凶器になるんだよ」
私が具体的に言っても、やっぱり分かっていない様子だった。
どうやら、この人とは相性が悪いようだ。
涙をハンカチで拭きすぎたのか、目の下が少しヒリヒリする。
「さようなら」
別れを告げ、早足でその場から去った。
私って、どうしてこんなに男運が悪いのだろう?
私のことを分かってくれる、優しい人はいないかな……。
「きゃっ!」
段差に気づかず、足が滑って身体が前へ倒れていく。
「危ない!」
近くにいた男性が、倒れる私を支えてくれた。
「大丈夫ですか?怪我は?」
「だ、大丈夫です……」
まさかこの男性が、私の旦那になるとは、この時は思いもしなかった。

8/18/2025, 10:20:43 PM

街灯がチカチカと点滅している静な夜道。
塾が終わり、友達と一緒に帰っていた。
途中の十字路で別れ、私一人になる。
塾を出る前、お父さんから「迎えに行こうか?」とメッセージが来てたけど、友達にお父さんを見られるのは恥ずかしいから断った。
一人になって急激に心細くなり、早足で家へ向かって歩く。
……いつからだろう?
後ろから、足音が聞こえてくる。
私と同じ方向へ歩いているだけかな?
それとも……。
いや、変なことを考えるのはやめよう。
更に、歩く速度を速める。
後ろの足音も、速くなっているような……。
地面をチラっと見ると、私の影と、もう一つ影があった。
勇気を振り絞り、立ち止まって、後ろを振り向く。
「誰!?」
「おぅわ!?」
「お父さん!?」
私の後ろにいたのは、お父さんだった。
「なんでお父さんがここに?」
「いや、その……やっぱり心配だったから、塾の近くで待っていたんだ」
「メッセージで言ったでしょ?大丈夫だから来なくていいって。もう……来てたなら声かけてくれたらよかったのに」
「いやぁ~……お前の友達が居たから声をかけづらくてな。ははは」
「変なところでシャイになるんだから……」
正直、足音の正体がお父さんでよかった。
お父さんと横に並び、一緒に歩く。
心細くて怖かったってお父さんに言ったら、調子に乗りそうだから言わないでおこう。
しばらく歩いていると、違和感を感じた。
……後ろから、足音が聞こえてくる。
おかしい。お父さんは横で歩いているはずなのに。
地面には、私とお父さんの二つの影しかない。
足音をよく聞くと、ビチャ……ビチャ……まるでずぶ濡れ状態で歩いているような音だった。
しかも、少しずつ、近づいてきている。
「お父さん」
「ん?なんだ?」
「逃げよっ!」
「お、おい!?」
私はお父さんの手を引き、家まで走った。

8/17/2025, 11:14:41 PM

脳内に響き渡るセミの声と風鈴の音。
夏に君と出会い、夏に君は亡くなった。
君は夏が大好きで、すごく暑い日でも向日葵畑を走っていたことをよく思い出す。
今でも、麦わら帽子を被って笑う君の姿が目に浮かぶ。
空を見上げると、いつもより高く見えた。
今は秋だという現実を突きつけてくる。
それでも、俺と君の夏は終わらない。
これからも、季節が変わろうとも、ずっと。
どこかに君がいる空を、しばらくの間見ていた。

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