たーくん。

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5/18/2025, 11:22:50 PM

人酔いしてしまいそうなほど人が多い駅構内。
私達は二年弱付き合っていたけど、お互い夢を叶えるために別れることになった。
彼氏は人混みに紛れて、どんどん遠ざかっていく。
……やっぱり、別れたくない。
気がつけば、私は人をかき分けて走っていた。
彼氏に手を伸ばし、腕を掴んだ。
「まって!やっぱり私は別れたく──」
「えっ?」
振り向いたのは彼氏ではなく、知らない男性。
「すいません!間違えました!」
男性に謝って、再び人をかき分けて彼氏を探す。
あの黒パーカー……間違いない、今度こそ彼氏だ!
手を伸ばし、パーカーのフードを掴んだ。
「まって!私、あなたと一緒に──」
「ぐえっ!?げほっ!げほっ!いきなりなにするんだ!」
振り向いたのは彼氏ではなく、おじさん。
「すいません!また間違えました!」
「ったく、気をつけろよな」
おじさんは私を睨みつけて、去っていった。
「……お前さっきからなにやってるんだよ」
「ひゃっ!?」
横から幽霊のように現れたのは、彼氏。
「人に迷惑かけるなよ。じゃっ」
彼氏は背を向け、歩き始めた。
「まって!」
私は今度こそ間違えないように、彼氏の腕をガシッと掴んで引き寄せた。

5/18/2025, 1:39:19 AM

ゆっくりと空を泳いでいるふわふわの雲達。
私は雲がうらやましいと、いつも思っている。
だって、世界を見下ろすことが出来るから。
「俺達は毎日世界旅行してるんだぜ?いいだろ~?」と、雲同士で肩を組みながら自慢しているに違いない。
だけど、私には足がある。
空は飛べないけど、自分の足で世界を巡って踏み締めてやるんだ。
「見てなさいよっ!雲達ぃ!」
空に向かってビシッ!と指をさし、呑気に泳いでいる雲達に言った。
この日のために、沢山働いてお金を貯めて、課長に頼み込んで長期休暇を取ったのだ。
私はパスポートを握りしめ、中身がパンパンのキャリーケースを引っ張りながら、空港へ向かった。
まだ知らない世界が、私を待っている!

5/16/2025, 10:58:31 PM

部屋の六割を支配しているポスターとアクリルスタンド。
全て、推しのグッズだ。
長年応援していたが、去年卒業してしまった。
当時、現実を受け入れられず、現実逃避していたと思う。
推しが卒業してから一年経ち、時間は掛かったけど、自分なりに気持ちの整理が出来た。
気持ちを一新するためにグッズを手放すか、そのまま残すか。
大げさに言えば、別れた彼女との思い出の品を捨てるか捨てないかと似たような悩みだ。
……確か、こういう推しグッズはフリマで売買出来たよな。
スマホでフリマのアプリをダウンロードし、持ってるグッズ名を入力して検索してみた。
今では手に入らないからか、当時の販売価格より数倍の価格で売買されていて、思わず笑ってしまう。
俺は金に目が眩み、持ってる推しグッズを全てフリマで売り飛ばした。

5/15/2025, 11:21:41 PM

水滴が垂れ落ちる音しかしない真っ暗の洞窟。
戦士達がこの洞窟を通るという噂を聞いた魔物達は、戦士達を食らうべく、洞窟内の灯りを消して結界を張った。
突然灯りが消え、慌てる戦士達。
魔物達は、ゆっくりと戦士達の所へ近づいていく。
「魔法使い!ライトの魔法で光を!」
「分かりました戦士さん!ライト!」
魔法使いはライトの魔法を唱えるが、ふわっと光るだけですぐに消えてしまう。
「駄目です戦士さん!洞窟内に魔法力を低下させる結界が張ってあります!」
「魔物の仕業か。ならば……僧侶!頭を借りるぞ!」
戦士は僧侶の頭を両手で掴み、魔法使いの前に出す。
「戦士よ、了解する前にいきなり頭を掴まないでくれ」
「魔法使い!僧侶の頭にライトの魔法を使ってくれ!」
「……聞いとらんな。これだから若いもんは……」
「僧侶さん、頭借ります!ライト!」
魔法使いが僧侶の頭に向かってライトの魔法を使うと、まばゆい光を放ち、洞窟内は光に包まれる。
「なんだこの光は!グアアア!」
魔物達は光と共に消滅した。
徐々に光は収まっていき、消えていた洞窟内の灯りが再び灯る。
戦士は僧侶のハゲ頭を利用し、ライトの魔法を反射させて威力を上げたのだ。
「まさかわしの頭が役に経つとはな。これで先へ進め……ん?」
僧侶の周りには、光でやられた戦士と魔法使いが倒れていた。

5/14/2025, 11:13:10 PM

休日の昼間の街に溢れかえる若い女性達。
すれ違うたび、いい匂いがする。
女性の匂いを堪能するのもいいが、俺は酸素になりたい。
そうすれば、女性の鼻と口から体内に入り、じっくり体内を冒険してから、女性の二酸化炭素となって外へ出れる。
想像するだけて頬が緩み、今にもよだれが出そうだ。
「ママー、あの人一人でわらってるよー」
「しっ!変な人に指ささないの!」
幼女と人妻にボロクソ言われているが、対象外なのでなに言われてもノーダメージ。
「……」
黒髪ロングの清楚な女性に、変な目で見られている。
ゾクゾクして、なにかに目覚めそうだ。
世の女性から冷たい目で見られても、俺は生きている。同じ空気を吸って!
「すぅーーー!」
「なんかこっち向いて息吸ってる!?」
「やだ!キモい!」
罵声を浴びながら、俺は思いっきり女性達の匂い付きの空気を吸ってやった。
この後、不審者として警察官から職質を受けたのは言うまでもない。
……やっぱり俺は、人目につかない酸素になりたい。

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