人酔いしてしまいそうなほど人が多い駅構内。
私達は二年弱付き合っていたけど、お互い夢を叶えるために別れることになった。
彼氏は人混みに紛れて、どんどん遠ざかっていく。
……やっぱり、別れたくない。
気がつけば、私は人をかき分けて走っていた。
彼氏に手を伸ばし、腕を掴んだ。
「まって!やっぱり私は別れたく──」
「えっ?」
振り向いたのは彼氏ではなく、知らない男性。
「すいません!間違えました!」
男性に謝って、再び人をかき分けて彼氏を探す。
あの黒パーカー……間違いない、今度こそ彼氏だ!
手を伸ばし、パーカーのフードを掴んだ。
「まって!私、あなたと一緒に──」
「ぐえっ!?げほっ!げほっ!いきなりなにするんだ!」
振り向いたのは彼氏ではなく、おじさん。
「すいません!また間違えました!」
「ったく、気をつけろよな」
おじさんは私を睨みつけて、去っていった。
「……お前さっきからなにやってるんだよ」
「ひゃっ!?」
横から幽霊のように現れたのは、彼氏。
「人に迷惑かけるなよ。じゃっ」
彼氏は背を向け、歩き始めた。
「まって!」
私は今度こそ間違えないように、彼氏の腕をガシッと掴んで引き寄せた。
5/18/2025, 11:22:50 PM