たーくん。

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4/26/2025, 1:29:57 AM

彼女とのメッセージのやり取りが映るスマホ画面。
俺達は遠距離恋愛をしていて、お互い社会人で忙しく、月に一回しか会えていない。
また会いたいねって話になり……。
「最近俺ばっかりそっちに行ってるから、たまにはこっちに恋よ」
“来い“を“恋“と間違えて変換してしまい、そのまま送ってしまった。
削除しそうとした瞬間、彼女からメッセージが届く。
「また愛にきて♡」
彼女は“会い“を“愛“にわざと変換して、おまけにハートを付けて送ってきた。
……可愛いやつめ。
「分かった。俺が、また愛に行く」
「うんっ。楽しみに待ってるね!」
結局また俺が行くことになったけど、誤変換のおかげで愛が深まり、早く彼女に会いたくなった。

4/24/2025, 11:18:47 PM

現実と同じくらい、星の数ほどいるSNSの女性達。
今日も自室に籠り、複数人にダイレクトメッセージを送る。
何人か返事が返ってきて、数回やり取りをするが、最終的にブロックされてしまい、強制終了してしまう。
運命の出逢いとかいうけど、俺には全く縁がない。
だから俺は、こうして自分で出逢いのきっかけを作るしかないんだ。
巡り巡って出来た出逢いが、本当の運命の出逢いだと、俺は思う。
トイレへ行き、戻ってくると、誰かからダイレクトメッセージが届いていた。
「あんた、何人もの女性にメッセージを送ってるらしいじゃない。都合が悪くなったらアカウント作り直してるみたいだし。そんなに出逢いがほしいなら、外に出て探しなさいよ」
正論の矢が飛んでいて、胸に突き刺さる。
矢を抜くことも、言い返すことも出来ず、放心状態になり、指を動かすことも出来なかった。

4/23/2025, 12:18:17 PM

待ちに待った週末の金曜日。
今日頑張れば、明日は休みだ。
明日は何しよう?
いつも家でだらだらしているだけだし、久しぶりにどこかへ出掛けるのもいいな。
出掛けるにしても、どこへ行こうか?
最近、商店街に新しい店が出来たらしいし、見に行ってみようかな。
いや、思い切って遠くへ行って、ぶらり旅というのも悪くない。
まっ、明日起きてから、どこへ行くか決めることにしよう。
よーし、明日は外へ出るぞー!
明日に向かってテンションを上げつつ、仕事に取り掛かった。

次の日の土曜日。
目が覚めて身体を起こすと、違和感を感じた。
今週は残業が多かったせいか、身体が怠い。
折角今日は出掛けようと思っていたのに……。
今日は家で身体を休めることにしよう。
そういうことで、おやすみなさい……。

次の日の日曜日。
昨日とは違い、身体は絶好調だ!
よーし、今日こそは出掛けるぞー!
部屋着を脱ぎ、この前通販で買った新しい服を着る。
髪型ヨシッ!歯磨きヨシッ!身だしなみヨシッ!財布ヨシッ!ショルダーバッグヨシッ!
準備万端で、俺は勢いよく玄関を開けた。
ザーーーッ!!!
外は、大雨だった。
あちこちに水溜まりが出来ていて、大量の雨粒がアスファルトを叩きつけながら跳ねている。
俺は、ゆっくりと玄関を閉めた。
出掛けるのは来週にして、今日も家で過ごすことにしよう。
来週はどこへ行こうかと予定を立てていたが、当日になると面倒になり、結局家で過ごす俺であった。

4/22/2025, 11:22:48 PM

街の中心にそびえ立つ、高いタワー。
まさか地元に、こんなタワーが出来るとは思わなかった。
タワーには大きいモニターが付いているけど、何か映るのかな?
「真由美、もうすぐ順番回ってくるからチケット準備しときなよ」
「うんっ」
今日は、彼氏の剛と一緒にタワーデートしに来ていた。
「俺がチケット渡すから、真由美のチケット貸して」
チケットを渡すと、剛は空いている左手で、私の右手を繋いだ。
「繋いどかないと真由美が迷子になるからな」
「もー、また子供扱いするー」
と言いつつ、離れないようにしっかりと剛の左手を握る。
手を繋いだまま、私達はタワーの中に入った。
タワーの中は、沢山の人で賑わっている。
見ているだけで目が回りそうだ。
これでも入場制限をしているらしい。
「人が多いな……上から見ていくか」
「うんっ、そうしよっか」
人混みから逃げるようにエレベーターに乗り、最上階へ向かったが、最上階も沢山の人で賑わっていた。
「あちゃー、読み違えたな。見終わった人が下に集まってると思ったんだけど、ここも同じか」
「もうここから見ていかない?折角最上階へ来たんだし」
「そうだな」
私達は人混みを避けながら、最上階を見て回る。
最上階から見る街の景色は、地上でいつも見ている景色とは違って、なんだか新鮮。
剛と景色を楽しんでいると、屋内放送が流れ始めた。
タワーについての説明をしていて、剛と一緒に耳を向けて放送を聞く。
「タワーに付いているモニターには、お客様の要望があれば文字を流すことが出来ます。現在は英数字しか流せませんが、大きい文字から小さい文字まで流せます。詳しくは一階へお越しください」
さっき外で見たモニターは、そういう役割があったんだ。
放送が終わったあと、再び二人で最上階を見て回る。
人が多くて時間は掛かったけど、逆にゆっくり見れてよかったと思う。
エレベーターで再び一階に戻ってきた。
「真由美、ごめん。ちょっとトイレ行ってきていいか?」
「あっ、だったら私も行く」
「じゃあトイレ前でまた集合な」
剛は男性トイレへ入っていった。
男性トイレは空いてて羨ましいなって、いつも思う。
女性トイレは、やはり行列が出来ていた。
ようやくトイレを済ませ、トイレ前に来たけど……剛の姿が見当たらない。
待ち続けて二十分経つけど、剛はまだトイレから出てこない。
もしかして、体調が悪いのだろうか?
人が多かったから、体調を崩したのかもしれない。
トイレで倒れてたらどうしよう……。
「ごめん!真由美!お待たせ!」
剛はトイレからじゃなくて、別の所から走ってきた。
「あれ?どこか行ってたの?」
「ちょっと……ね。まだ時間あるし、もう少し見て回ろうぜ」
「ん?なにか予約してたっけ?」
「あー……こっちの話。まぁまぁ、細かいこと気にせず行こ行こ」
「う、うん?」
剛は私の手を再び握り、一階を見て回った。
外へ出たのは一時間後。
スマホの時計を見ると、もうすぐ正午になるところだった。
お昼何食べに行こうかな?
「ねぇねぇ、剛。お昼──」
「真由美!タワーを見てくれ!」
剛にお昼何食べたいか聞こうとしたら、私の声が書き消される。
なんだろう?と思いながら、タワーを見た。
「モニターを見ててくれ。俺から真由美に伝えたいことが映るから」
「えっ、最上階の放送で言ってたやつだよね?いつの間にやったの?」
「真由美がトイレに行ってる間に……てか、時間掛かったけどな。さっきは待たせてごめんよ」
そっか。だからあんなに遅かったんだ。
私に伝えたいことってなんだろう?
正午を知らせる音楽が流れると同時に、モニターに大きい文字が流れた。
”B L"
……ん?BL?
「しまった!でかすぎて二文字しか流れてない!」
剛は頭を抱えながら言った。
BL……BL……あっ!そういう意味ね!
もう、直接言ってくれたらいいのに。
「剛の伝えたいこと、ちゃんと伝わってるから大丈夫だよ!」
「え、本当?」
「うんっ!お昼はベーコンレタスバーガー食べに行こうねっ!」
「え?」
「えっ?」
お互い、頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「BLってベーコンレタスバーガーじゃないの?今ちょうどお昼だし、食べたいのかなって……」
「ちっがあああう!Big Loveだよ!Big Love!」
剛が大きな声でラブを連呼するから、照れくさくて、顔が熱くなってきた。
「ありがとう剛。私も、Big Loveだよっ」
剛の頬にキスすると、剛は顔をリンゴみたいに真っ赤になった。

4/22/2025, 3:13:28 AM

平日でも人が多い地元にある大きい病院。
一時間以上、待合室で待ち続け、ようやく名前を呼ばれた。
病院で待っているだけでも、疲れてしまう。
少しふらふらしながら、診察室へ向かった。
「どうされました?」
「最近、幻聴というか……なんというか……悪魔のささやきが聞こえるんです」
「どんなささやきです?」
「仕事に行こうとしたら『今日はサボっちまえよ』とか、残業前には『皆に任せて定時で帰ってしまえ』とか……」
「ふむ。ささやきが聞こえることが多いのはどこですか?」
「仕事がある日ですね」
「ふむ」
医師は俺の顔をじーっと見ている。
俺が悪魔のささやきが聞こえるって言ったから、変な奴だと思われているのだろうか?
今日は課長に無理言って有給を取って病院に来た。
あとで報告の電話をするけど、なにか言われそうで不安だ。
「人手不足なのに」ってボヤいてたからな……。
「働きすぎですね」
「えっ」
医師からの言葉に思わず驚く。
そんなに働いてたっけ、俺。
「いつも何時間ぐらい仕事を?」
「残業込みで十五時間ぐらいで、土曜も出勤してます」
「ふむ……。さっき言ってた幻聴は悪魔のささやきではなく、もう一人のあなたが警告していたんだと思います。身体を休めるようにと」
「もう一人の俺……ですか」
自分では自覚なかったが、知らず知らずのうちに無理をしていたんだな……。
「そうです。なのでしばらく仕事をせず休むように。診断書を書いておくので、会社へ渡して下さい」
「は、はい」
診断書を貰い、病院を出る。
『やったな!これで仕事サボれるぞ!』
また悪魔のささやきが聞こえてきた。
いや、これはもう一人の俺……だっけか。
『あとは皆に任せて、ゆっくり休もうぜ!』
そうだな。診断書を貰ったことだし、しっかり身体を休めよう。
……本当にそれでいいのか?
課長は人手不足と言っていた。
俺だけ休むと考えると、罪悪感が沸く。
「……ふぅ」
スマホを取り出し、課長に電話した。
「診察結果はどうだった?
「異常……なかったです」
「そうか。それはよかった。今から出てこれるか?人手が足りなくて困ってるんだ」
「分かりました。すぐ行きます」
電話を切り、スマホをポケットに入れる。
『……おい、それでよかったのかよ』
「ああ……いいんだ」
俺は診断書をクシャクシャに丸め、会社へ向かった。

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