街の中心にそびえ立つ、高いタワー。
まさか地元に、こんなタワーが出来るとは思わなかった。
タワーには大きいモニターが付いているけど、何か映るのかな?
「真由美、もうすぐ順番回ってくるからチケット準備しときなよ」
「うんっ」
今日は、彼氏の剛と一緒にタワーデートしに来ていた。
「俺がチケット渡すから、真由美のチケット貸して」
チケットを渡すと、剛は空いている左手で、私の右手を繋いだ。
「繋いどかないと真由美が迷子になるからな」
「もー、また子供扱いするー」
と言いつつ、離れないようにしっかりと剛の左手を握る。
手を繋いだまま、私達はタワーの中に入った。
タワーの中は、沢山の人で賑わっている。
見ているだけで目が回りそうだ。
これでも入場制限をしているらしい。
「人が多いな……上から見ていくか」
「うんっ、そうしよっか」
人混みから逃げるようにエレベーターに乗り、最上階へ向かったが、最上階も沢山の人で賑わっていた。
「あちゃー、読み違えたな。見終わった人が下に集まってると思ったんだけど、ここも同じか」
「もうここから見ていかない?折角最上階へ来たんだし」
「そうだな」
私達は人混みを避けながら、最上階を見て回る。
最上階から見る街の景色は、地上でいつも見ている景色とは違って、なんだか新鮮。
剛と景色を楽しんでいると、屋内放送が流れ始めた。
タワーについての説明をしていて、剛と一緒に耳を向けて放送を聞く。
「タワーに付いているモニターには、お客様の要望があれば文字を流すことが出来ます。現在は英数字しか流せませんが、大きい文字から小さい文字まで流せます。詳しくは一階へお越しください」
さっき外で見たモニターは、そういう役割があったんだ。
放送が終わったあと、再び二人で最上階を見て回る。
人が多くて時間は掛かったけど、逆にゆっくり見れてよかったと思う。
エレベーターで再び一階に戻ってきた。
「真由美、ごめん。ちょっとトイレ行ってきていいか?」
「あっ、だったら私も行く」
「じゃあトイレ前でまた集合な」
剛は男性トイレへ入っていった。
男性トイレは空いてて羨ましいなって、いつも思う。
女性トイレは、やはり行列が出来ていた。
ようやくトイレを済ませ、トイレ前に来たけど……剛の姿が見当たらない。
待ち続けて二十分経つけど、剛はまだトイレから出てこない。
もしかして、体調が悪いのだろうか?
人が多かったから、体調を崩したのかもしれない。
トイレで倒れてたらどうしよう……。
「ごめん!真由美!お待たせ!」
剛はトイレからじゃなくて、別の所から走ってきた。
「あれ?どこか行ってたの?」
「ちょっと……ね。まだ時間あるし、もう少し見て回ろうぜ」
「ん?なにか予約してたっけ?」
「あー……こっちの話。まぁまぁ、細かいこと気にせず行こ行こ」
「う、うん?」
剛は私の手を再び握り、一階を見て回った。
外へ出たのは一時間後。
スマホの時計を見ると、もうすぐ正午になるところだった。
お昼何食べに行こうかな?
「ねぇねぇ、剛。お昼──」
「真由美!タワーを見てくれ!」
剛にお昼何食べたいか聞こうとしたら、私の声が書き消される。
なんだろう?と思いながら、タワーを見た。
「モニターを見ててくれ。俺から真由美に伝えたいことが映るから」
「えっ、最上階の放送で言ってたやつだよね?いつの間にやったの?」
「真由美がトイレに行ってる間に……てか、時間掛かったけどな。さっきは待たせてごめんよ」
そっか。だからあんなに遅かったんだ。
私に伝えたいことってなんだろう?
正午を知らせる音楽が流れると同時に、モニターに大きい文字が流れた。
”B L"
……ん?BL?
「しまった!でかすぎて二文字しか流れてない!」
剛は頭を抱えながら言った。
BL……BL……あっ!そういう意味ね!
もう、直接言ってくれたらいいのに。
「剛の伝えたいこと、ちゃんと伝わってるから大丈夫だよ!」
「え、本当?」
「うんっ!お昼はベーコンレタスバーガー食べに行こうねっ!」
「え?」
「えっ?」
お互い、頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「BLってベーコンレタスバーガーじゃないの?今ちょうどお昼だし、食べたいのかなって……」
「ちっがあああう!Big Loveだよ!Big Love!」
剛が大きな声でラブを連呼するから、照れくさくて、顔が熱くなってきた。
「ありがとう剛。私も、Big Loveだよっ」
剛の頬にキスすると、剛は顔をリンゴみたいに真っ赤になった。
4/22/2025, 11:22:48 PM