たーくん。

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4/20/2025, 12:50:49 PM

夜空に光り輝く無数の星達。
今日はいつもより星が出ていて、明るさが増しているように感じる。
地上に電力が無くなってから、十年経つ。
昼間は太陽が明かりになり、夜は月と星が明かりになる。
だが、月が出ていない日は、星の明かりだけが頼りだ。
曇りや雨の日なんて、世界が終わったかのような暗黒の世界になってしまう。
まぁ、もうすでに今の世界は終わっているようなもんだけどな……ははは。
暗い世界にいると、気分まで暗くなる。
気分を上げるために、空を見上げ、星達から明るさを分けてもらう。
「いつの日か、地上がまた明るくなりますように……」
声に出して願い事を言うと、星達が返事をするかのように、一筋の流れ星が夜空を駆けた。

4/20/2025, 1:10:49 AM

真っ白のスクリーンに映し出された真っ黒の動物達。
息子が通っている幼稚園で、先生達が影絵劇場をすると聞いて観に来た。
動物達は次々と姿を変えて、スクリーンに現れる。
人間の手で色んな動物を表現出来るなんて、まるで魔法みたいだ。
園児達は動物の影絵を見て、わーわーきゃーきゃー言いながら喜んでいる。
もちろん、息子もだ。
楽しんで喜んでいる姿を見ていると、ほっこりする。
子供は無邪気で可愛いな。
先生達も園児達が良い反応してくれるから、やりがいがあるだろう。
「ちょっと……もう少しそっちに寄って」
「こっちも狭くて……あー次はなんだっけ?」
「蝶ですよ。皆で舞うんです」
……裏方の先生達の声が聞こえてきた。
園児達はスクリーンに夢中で、先生の声に気づいていない。
しばらくスクリーンが真っ黒になり、パッと明るくなると同時に現れたのは、無数の蝶達。
羽をパタパタさせながら、左右に舞っている。
しかし、何匹かの蝶がぶつかり、下へ落ちていく。
「いててて!」
「そっちに寄って言ったでしょ!」
「前をちゃんと見てないからだろ!」
「しーっ!まだ劇の途中ですよ!」
いや、聞こえてるからね?先生達。
今のでリズムが狂ったのか、あちこちで蝶達の衝突事故が起きて、次々と下へ落ちていき、全滅した。
「あーあ、ちょうちょたちしんじゃった」
「はかないいのちだったねー」
影絵劇場の結末と園児達の反応を見て、なんともいえない気持ちになった。

4/18/2025, 11:51:04 PM

俺の部屋より数倍広い王座の間。
兵士に朝早く起こされたから、まだ眠い。
「勇者よ」
俺がいつも使っている椅子より、数百倍値段が高そうな椅子に座った王が俺に向かって言った。
「ふぁ~~」
眠気には勝てず、大きな欠伸が出る。
「王の前で欠伸とは無礼な……」
近くにいた兵士が、俺に槍を向けた。
「兵士よ。下がっておれ」
「はっ!」
王の一言で兵士は槍を下げて、後ろに下がる。
王は再び俺に話しかけてきた。
「改めて、勇者よ。旅立ちの時が来た」
「なんで?」
「なんでって……封印されていた魔王が復活し、各地で暴れ回っているから……」
「だから、なんで俺が旅立たないといけないんだ?」
「お前は勇者の血を引いているからだ」
「……はあ」
思わず溜め息が出る。
“勇者の血を引いている“
周りから何度も言われてきた言葉。
今の俺には、呪いの言葉にしか聞こえない。
「勇者の血を引いているだけで旅に出て、魔王を倒さないといけないのか?」
俺が王にそう言うと、周りにいた兵士達がざわめき始めた。
「王様、俺を過信し過ぎだぞ?俺は剣の腕はさっぱりだし、魔王倒すなんて無理だ」
「それにしては体つきが良いではないか。鍛えているだろう?」
「肉体労働で勝手に筋肉がついただけさ。俺は早くに両親を亡くしたから、生きるために毎日働いているんだ」
いつも深夜まで働いていて、身体を休めるために寝ていたのに、朝早く起こされていい迷惑だ。
「それは……ご苦労だな。だが、魔王倒すには勇者の血を者の力が必要なのだ」
まだ言うか、この王は……。
「俺じゃなくても、世界中に強い奴らがごろごろいるだろ?そいつに頼めばいいじゃないか」
「世界のために、魔王を倒したいと思わないのか?」
「俺は自分のことで精一杯なんだ。他の奴に頼め」
勇者が世界を救うなんて、もう古いんだよ。
世界を救いたいって思う奴に、魔王を倒してもらえばいい。
王は椅子から立ち、俺に指を指した。
「ええい!ごちゃごちゃ言わずとっとと旅立たんか!物語が始まらんだろう!」
「何を訳の分からんことを言っているんだ」
大丈夫かよ。この王。
「金を渡すから、とっとと旅立てい!」
兵士達が俺の目の前に、大きい袋を床に置く。
触ると、チャリチャリと音が鳴った。
結構な額が入ってるな……。
仕方ない。王の言うとおりにしてやるか。
「分かったよ。そこまで言うなら旅立ってやる。この金は貰うからな。あとで文句言うなよ」
「おお!勇者よ!決心してくれたか!魔王を倒し、世界を平和にするのだ!」
王は今にも踊りそうなくらい喜んでいる。
「じゃあな」
大金が入った袋を持ち、城を後にする。
家に戻り、荷物をまとめ、仕事場に別れの挨拶をした。
「よーし、出発だ」
俺は生まれ育った国を捨て、旅に出た。
どこか、小さな村でひっそりと暮らそう。

4/18/2025, 1:17:10 AM

机の上に置かれた真っ白の紙。
今日の絵のテーマは、情熱。
周りを見ると、美術部の皆は何を描こうか悩んでいる。
中には、もう描き始めている子がいた。
私もこうしちゃいられない。
再び紙に視線を戻す。
真っ先に思いついたのは、炎。
私は、ここにいる美術部の誰よりも絵が好きだ。
その想いを紙に描く!
鉛筆を持ち、力強く、紙に炎を描いていく。
だが、力を入れすぎたのか、鉛筆の芯が折れてしまった。
顧問の先生に言って、鉛筆を換えてもらう。
想いではなく、これではただ力を入れすぎているだけだ。
もう一度、何を描くか考えてみる。
私は、絵が好き。
だから、好きなものを描いて、誰かにこの熱い想いが届くように……描こう。
「よしっ」
鉛筆を持ち、紙に絵を描いていく。
力を入れすぎず、アイススケートのように軽やかに、滑らかに鉛筆を動かす。
描き終えた絵は、見ているだけで胸が熱くなる、過去一の出来だった。

4/17/2025, 1:18:06 AM

目の前に広がる色鮮やかな無数のペンライト。
今日は、私のライブに沢山の人が集まってくれた。
近くにいるファン達からの声援は、よく聞こえる。
遠くの方を見てみると、ペンライトを大きくブンブン振っているファン達の姿が見えた。
耳を集中させると、これでもか!っていうぐらい大きな声で声援してくれている。
その姿を見て、胸が熱くなっていく。
私は息を大きく吸い込み……。
「後ろにいる皆ぁーー!ちゃんと声届いてるよぉーー!いつも!ありがとうーー!!」
マイクを使わず、大きな声で感謝の言葉を叫んだ。

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