たーくん。

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真っ白のスクリーンに映し出された真っ黒の動物達。
息子が通っている幼稚園で、先生達が影絵劇場をすると聞いて観に来た。
動物達は次々と姿を変えて、スクリーンに現れる。
人間の手で色んな動物を表現出来るなんて、まるで魔法みたいだ。
園児達は動物の影絵を見て、わーわーきゃーきゃー言いながら喜んでいる。
もちろん、息子もだ。
楽しんで喜んでいる姿を見ていると、ほっこりする。
子供は無邪気で可愛いな。
先生達も園児達が良い反応してくれるから、やりがいがあるだろう。
「ちょっと……もう少しそっちに寄って」
「こっちも狭くて……あー次はなんだっけ?」
「蝶ですよ。皆で舞うんです」
……裏方の先生達の声が聞こえてきた。
園児達はスクリーンに夢中で、先生の声に気づいていない。
しばらくスクリーンが真っ黒になり、パッと明るくなると同時に現れたのは、無数の蝶達。
羽をパタパタさせながら、左右に舞っている。
しかし、何匹かの蝶がぶつかり、下へ落ちていく。
「いててて!」
「そっちに寄って言ったでしょ!」
「前をちゃんと見てないからだろ!」
「しーっ!まだ劇の途中ですよ!」
いや、聞こえてるからね?先生達。
今のでリズムが狂ったのか、あちこちで蝶達の衝突事故が起きて、次々と下へ落ちていき、全滅した。
「あーあ、ちょうちょたちしんじゃった」
「はかないいのちだったねー」
影絵劇場の結末と園児達の反応を見て、なんともいえない気持ちになった。

4/20/2025, 1:10:49 AM