たーくん。

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3/11/2025, 1:18:03 PM

雨をザーザー降らす厄介な雨雲。
仕事の帰り道に星空を見るのが日課なのに、神様が意地悪をして見せてくれない。
おまけに傘をさしているから、空を見るのは困難だ。
横断歩道を渡ろうとすると、信号機が点滅した。
渡るのを止めて、青になるまで待つ。
「はぁ……」
思わず溜め息が出る。
雨が降ってるし、信号機が赤になるし、色々タイミングが悪い。
仕事でも嫌なことがあったし、余計に気分が下がってしまう。
「……ん?」
どこかから、聞き覚えのある音楽が聞こえてくる。
見上げると、横断歩道を渡った先にあるビルの大型ビジョンに、女性グループが歌っているMVが流れていた。
あの女性グループは確か……。
俺が学生の頃、ネットで活動していた子達だ。
『いつか、皆に寄り添って、皆の力になれるアイドルになりたいです!』
配信で、夢を熱く語っていたことを思い出す。
そうか……メジャーデビューしたんだ。
横断歩道の信号機が青になっても、俺は渡らずにMVを見ていた。
あんなに鬱陶しかった雨音は、彼女達の歌声で上書きされる。
彼女達は、星空のようにキラキラと輝いていた。

3/10/2025, 1:02:33 PM

真っ白な天井が広がる狭い室内。
今、もし願いが一つ叶うならば、時を戻してほしい。
……いや、またあの苦しみを味わうことになるから、やっぱり時を戻すのはなしだ。
そうだな……いっそのこと、ここに居る人達がいなくなればいい。
そうすれば、ここから出れる。
だが、人の気配は消えることなく、足音は止まない。
そういえば今は通勤ラッシュか……くそっ!
格好つけるのはやめだ!俺の願いは、ただ一つ。
トイレットペーパーをくれーーー!!!
俺は便座に座りながら、天井に向かって心の中で叫んだ。

3/9/2025, 11:18:20 PM

真っ暗の自室内で光るスマホの画面。
時刻を見ると、二時を過ぎていた。
「鳴呼……」
思わず声が漏れる。
また、やってしまった。
明日……いや、もう月曜日で仕事なのに。
休みを終わらせたくなくて、抵抗したくて。
無駄に夜更かしをしてしまった。

3/8/2025, 12:04:47 PM

出退勤時に通る、おしゃれな家が建ち並ぶ住宅地。
幼稚園・小学生の頃、この辺は草木が生えた空き地で、大きな土の山もあった。
友達と一緒に土の山に穴を掘って秘密基地を作り、沢山遊んで、すごく楽しかった記憶が残っている。
だが、中学生になる前に空き地は整地され、秘密基地も無くなってしまった。
友達との思い出が潰されたようで、すごく悲しかったな……。
それから次々と家が建っていき、いつの間にか人が住み始め、あっという間に住宅地になっていた。
小さい頃から見ていた景色が、こんなに変わってしまうんだと改めて思う。
ここにあった秘密基地は無くなってしまったけど……。
「うっす」
「今日は遅かったな」
「そうなんだよ。課長からいきなり残業しろって言われてさ……」
ネット内の俺達しか知らない秘密の場所で、愚痴ったり、一緒にゲームをしたり、今でも友達と一緒に楽しく遊んでいる。

3/7/2025, 12:11:29 PM

へんなにおいがして、すごくよごれている私の部屋。
毎日つらいけど、私にはお母さんが教えてくれた歌がある。
「ラララ~♪」
今日も私は歌う。
歌っていると、お母さんといっしょにいる気持ちになるから。
「ラララ~♪」
それに、歌うと元気になるから。
お母さんはいなくなったけど、お母さんの分まで私生きるよ。
「ラララ~♪」
歌っていると、お父さんがドアをけりながら入ってきた。
歌うのやめろ?
だって、これはお母さんが教えてくれた歌だから。
「ラララ~♪」
お父さん、どうしてそんなこわい顔するの?
この歌を聞いて、笑ってよ……。
「ラ……ラ……ラ……」
お父さんに首をしめられても、私は歌い続けた。

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