雨をザーザー降らす厄介な雨雲。
仕事の帰り道に星空を見るのが日課なのに、神様が意地悪をして見せてくれない。
おまけに傘をさしているから、空を見るのは困難だ。
横断歩道を渡ろうとすると、信号機が点滅した。
渡るのを止めて、青になるまで待つ。
「はぁ……」
思わず溜め息が出る。
雨が降ってるし、信号機が赤になるし、色々タイミングが悪い。
仕事でも嫌なことがあったし、余計に気分が下がってしまう。
「……ん?」
どこかから、聞き覚えのある音楽が聞こえてくる。
見上げると、横断歩道を渡った先にあるビルの大型ビジョンに、女性グループが歌っているMVが流れていた。
あの女性グループは確か……。
俺が学生の頃、ネットで活動していた子達だ。
『いつか、皆に寄り添って、皆の力になれるアイドルになりたいです!』
配信で、夢を熱く語っていたことを思い出す。
そうか……メジャーデビューしたんだ。
横断歩道の信号機が青になっても、俺は渡らずにMVを見ていた。
あんなに鬱陶しかった雨音は、彼女達の歌声で上書きされる。
彼女達は、星空のようにキラキラと輝いていた。
3/11/2025, 1:18:03 PM