僕は常に、曲を聴いている。
最近のJ-Popやらボカロやらとかではない。
この曲にジャンルはない、強いて言えばクラシックだろうか。
夏休み、涼しい部屋で一日中過ごしている。
その中で行われる宿題、携帯、掃除、それらで発生する音全てがこの曲に集約されているし解釈もできる。
言ってしまえば、エアコンの音や腹の虫の音もそうなっている。
周りから見たらそれは静寂と捉えることも出来るだろう、静寂だからこの曲が引き立つんだ。
『4分33秒』って良い曲だな、わはは。
「別れとは新たな出会いや生活の始まりである、だから、」「湊人〜、行くわよ〜!」
卒業式の終わり、人の多い昇降口で好きな先輩に言われたその時の気持ちを答えよ。
①先輩は私を励ましてくれているんだ、これからもがんばらないと!
②先輩は私と離れたくないのがバレたくないから、強がっているんだ!可愛い〜!
③後輩への最後のセリフがそれか?あぁ?カッコつけようとすな、ヘタレ!
Thinking Time…
正解は⑧ああ、青春の終わりを告げる声が聞こえる。でした〜!だからの続きが気になるが、初めての恋は桜と共に散りゆく運命なのかな。(噂によると初恋→ゴールインは結構少ないらしい)
すると、先輩が私の目を隠した。周りの声と鼓動が同じ音量で聞こえてくる、もしかして、これは?
「今はこれだけ、ここはお預けだ。二年後、この場所で待ってる。」
と先輩がメモ用紙をポケットにいれて、暗さからの解放と共に先輩は親の元へ向かった。手の平の感触は、恐らく忘れられない。
何だ、片想いじゃなかったんだとドキドキしながら紙を開けるとこう書かれていた。
「君と初めて出会った公園で待ってる、返したいものがあるんだ。」
それって、リアルで出会った時に、あまりにも話が盛り上がって帰る前に渡しちゃった。
「それってさっきでよくないか。アイドルのアルバム全種類(初回限定版も含む)くらい。」
別れ際にそれを言えなかった私の心情と予定通りに行った場合の未来に起こりうる感情をそれぞれ二字熟語で答えよ。(自由記述)
通り雨が近づいてきた、雲が闇落ちしかけている。
人々はそれを見て憂いを感じた。記憶を想起した。
ただの気象、されど気象。それだけで勝手に人々は心が、感情が変わる。感情が体に出る。
とかいう俺もその普遍的人間の一人なのだが。
複雑な気持ちと傘を持って、外に出た。
通り雨が来た、循環した水がまた降ってくる。
刹那の間、待ち続けた。
苦い思い出はミルクではなく、水で溶かさないと。
雨声で何も聞こえない、耳元で鳴る音楽も喧騒も。
感情が静けさを持ったまま落ちていく。
肩に軽い暖かさが乗る、思わず振り返る。
通り雨が遠ざかった、雨は少しだけ止まない。
二度の後悔をさせない自分への鼓舞、そして雑談途中で告げる。熟成と改良を繰り返したこの感情を。
回答の待ち時間はさっきの雨みたいだった。望みと救済の太陽が、顔も心も空も晴らした。雨は止んだ。
祝福の虹が二つかかった、空と何かに彩りを与えた。
また近づいたその時、俺は想起するだろう。
刹那の雨の中行われた、今に繋がる乾坤一擲を。
きっかけはどこかの茶屋で君が言っていた一言。
「そういえば、三色だんごって季節を表してるんだっけ?」
「そうだよ。ピンクは春、黄緑は夏、白は冬、だった気がする。」
「詳しいね!じゃあ何で、秋はないの?」
「確か商売のことを…」
君は生粋の秋生まれ。旅行にいくのは必ず9-11月で、目的地は紅葉や銀杏並木が綺麗な場所。インテリアは全部暖色。今日の服装も、とにかく秋大好き人間な君は、ないという事に憂いているのかもしれない。
「オレンジとか赤あった方が絶対美味しいって!」
「そっちかーい!」
杞憂で終わった、と心の中でホッとした自分がいる。安堵と共に疑問が過ぎる、純粋な疑問が。
「ねえ、なんて秋好きなの?」
「秋が好きな理由?もう、何回も言ってるじゃん!」
「秋には沢山の記念日があるから楽しいの!」
敬老の日・ポッキー&プリッツの日・自分の従姉妹の友達であるKさんの誕生日、と嬉々として説明していくその笑顔を、ずーっと見ていたいのは、なんでかな。
「別に今日は記念日じゃないけどね、はははっ!」
「…もしさ、記念日になるって言ったらどうする?」
その時、彼女は何を勘違いしたのか僕の肩を強く叩いた。笑っていた。
「つ、つ、ごほん。えっと、その、あの!」
心拍数の上昇、紅葉色の顔、汗と震えが止まらない。彼女は絵文字の笑顔をして、言った。
「分かったー!おかわり欲しいんでしょ?ここのお店、景色も綺麗だけどスイーツも美味しいんだよ!」
追加団子。やっぱ、そうでないと。すると君は、白い団子に突如イチゴソースを注入して4個にして渡してきた。
「はい、これで四季の完成!新しい団子である四色団子の記念日決定!でも、記念日一つじゃつまらないなー。誰か新しい記念日、つくらないかなー。チラ。」
そこからもう十数年が経って、今日はその記念日。家族で四色団子を一緒に作って食べた。
「ねーねー、何でこの団子は赤いの?」
「それはね、味に飽きを出さない為だよ。ふふっ。」
「うまいこというなー!」
記念を祝うかのように銀杏と紅葉が、夕焼けの空を背景に落ちた。
初めて見た時は未来への期待で、何気ない住宅街も輝いて見えた。この景色と共に喜怒哀楽を感じていくと思うと、心がムズムズしていた。じっくり見ていたせいでダンボール開封をしている家族に軽く言われたけど。
「これから頑張るぞ!」
特に大きな出来事もない私の人生とは裏腹にお外はカラーリングをコロコロと変えていく。近所の桜はゆったりと舞い散り、人の家の屋根にいろんな色の鯉のぼりがたなびいていた春。暑さが強くなったり、快晴の夜空にかかった川を見たり、子供とセミが賑やかな夏。秋は、ただ紅葉が綺麗で寒くなってきた印象だな。深く考える事が無くなってきた。
入居してから8ヶ月後、私は寒さと布団への愛着で起床困難になっていた。脳を覚醒させるためにスマホを見る、そこには衝撃の事実が書かれていた。私はさっきの困難を忘れさせるくらいの素早さを見せて、カーテンを開けた!
「わぁ…!」
地元では見られなかった景色が今ここで見られた。しばらく不動だった顔も今は笑窪を浮かべているし、普段は出せない声もするすると出せた。もう、これを見れただけで満足だ。仕事の事も、何もかも、忘却の彼方へと一直線に向かわせられた。
「さあ、いこうかな!」
これが最後で最高のシーナリー、おそらく雪で遊んでいる子供のはしゃぎ声をBGMにして私は向かった。綺麗な部屋、最高の窓の外、自分が反射した窓もこれが最後だ。
「いってきます!」
最後は、キラキラしていた。