きっかけはどこかの茶屋で君が言っていた一言。
「そういえば、三色だんごって季節を表してるんだっけ?」
「そうだよ。ピンクは春、黄緑は夏、白は冬、だった気がする。」
「詳しいね!じゃあ何で、秋はないの?」
「確か商売のことを…」
君は生粋の秋生まれ。旅行にいくのは必ず9-11月で、目的地は紅葉や銀杏並木が綺麗な場所。インテリアは全部暖色。今日の服装も、とにかく秋大好き人間な君は、ないという事に憂いているのかもしれない。
「オレンジとか赤あった方が絶対美味しいって!」
「そっちかーい!」
杞憂で終わった、と心の中でホッとした自分がいる。安堵と共に疑問が過ぎる、純粋な疑問が。
「ねえ、なんて秋好きなの?」
「秋が好きな理由?もう、何回も言ってるじゃん!」
「秋には沢山の記念日があるから楽しいの!」
敬老の日・ポッキー&プリッツの日・自分の従姉妹の友達であるKさんの誕生日、と嬉々として説明していくその笑顔を、ずーっと見ていたいのは、なんでかな。
「別に今日は記念日じゃないけどね、はははっ!」
「…もしさ、記念日になるって言ったらどうする?」
その時、彼女は何を勘違いしたのか僕の肩を強く叩いた。笑っていた。
「つ、つ、ごほん。えっと、その、あの!」
心拍数の上昇、紅葉色の顔、汗と震えが止まらない。彼女は絵文字の笑顔をして、言った。
「分かったー!おかわり欲しいんでしょ?ここのお店、景色も綺麗だけどスイーツも美味しいんだよ!」
追加団子。やっぱ、そうでないと。すると君は、白い団子に突如イチゴソースを注入して4個にして渡してきた。
「はい、これで四季の完成!新しい団子である四色団子の記念日決定!でも、記念日一つじゃつまらないなー。誰か新しい記念日、つくらないかなー。チラ。」
そこからもう十数年が経って、今日はその記念日。家族で四色団子を一緒に作って食べた。
「ねーねー、何でこの団子は赤いの?」
「それはね、味に飽きを出さない為だよ。ふふっ。」
「うまいこというなー!」
記念を祝うかのように銀杏と紅葉が、夕焼けの空を背景に落ちた。
9/26/2024, 4:11:17 PM