木漏れ日
吸い込まれそうなほど青く輝いている湖
陸には花が咲き乱れ、辺りに生い茂る木々は生命力溢れている。
雲1つ無い快晴でなんだか気分が良い。
つい柔らかい草地へ腰を落としてうつける。
こんな事をしているのは何時ぶりだろうか、最近はバイトに勉強、友達とゲームしたり遊びに行く。
ずっと慌ただしくって疲れていたのかもしれない。
慌ただしいのも楽しいが、小さい頃何でもないことで楽しかった。
いろんなモノを見て触ってそれだけで心満たされた僕は何処へ消えていったのだろう。
少し寂しいがそれが成長だし、知ら無いことを考えない程知ったということなのだろう。
物思いにふけつつ木漏れ日がキラキラと光を刺すこの場所を眺める。本当にここは桃源郷みたいだ。
知らない場所で帰り方も分からないのに何だか帰らなくても良い気がした。
そうやってポヤポヤしていると、葉と葉の隙間からニュッと手が伸びてきた。
気になって手を掴むと引っ張られ湖へ落ちる。
濡れたなぁと思うもぼんやりと見えた手の主は何処かで会った気がした。
「んはっ!」
目が覚めると家とは違う天井。桃源郷から帰ってきてしまった事を悟り少し名残惜しいが、これはきっとそういう事なのだろう。ナースコールを見つけ押してみる。
やっぱりここは病院無のだろう。
バタバタと看護師さんが動いているのがわかる。
覚醒してきた頭は病院の前を思い出す。
飛び出したボール、ソレを往復子供、つい手を伸ばしてしまった後記憶はない。
桃源郷で見た光景は夢かも知れないし幻覚かも知れない。
それでも僕の手を引いてここへ返してくれたのはきっと同じように事故で亡くなった小さな兄だった。
青い青い
「お母さんなんてもう知らない!!」
そう言って走り出してどれだけ来ただろうか。
最初はほんの些細な事だった気がするがもう覚えてない
辺りは薄明頃でもうすぐ夜だとつげている。
ただ明かりを求めてとぼどぼと彷徨う。手にはスマホと財布のみ。
つい、小腹が空いてしまいコンビニに入り物色する。
スマホの通知は煩くなっており、非通知に変えてしまった。
普段では買うことの無いお菓子やジュースを手に持って最寄り駅へと向かう。
何処か遠くへ行きたかったんだ。
そう、遠くに口煩い母親の影なんて無い遠くへ。
『ガタン ゴトン ガタン ゴトン』
ゆっくり進む電車に乗って、目的もなく旅をする。
小さい頃の憧れだった。
最近は勉強、勉強、勉強ばっかり、友達と遊びたいし、メイクだってしたい。
ジャンクフードも食べてみたいし、アイドルのライブにだって行きたい。
そんな事を考えながら移りゆく景色を眺める。
薄明から、日が落ち夜になる
お母さん心配してるだろうな。不意にそう後悔してしまう
今は絶賛反抗の旅だ、そう思いつつも1枚写真を送る
どれだけ電車に揺られただろうか。
何度か乗り換えして、終点まで来てしまった。
朝の5時、日の出の時間だ。
ふわっと塩の匂いがする。
気の無くまま歩く。
ふ日の光に誘われ顔をあげるとそこには、今の自分と似ても似つかない
青い青いたおやかな海があった。
風と
僕には少し不思議な力があるんだ。
妖精って言うのかな?小さき命が見えるんだ。
突然現われたかと思うとクスクス笑ったり消えたりする。
あとは火の妖精とかは火の近くに言って火を大きくしたり、風の妖精は突然木々を揺らしたりする。
悲しい話だけど地震の後、海を見ると沢山の水の妖精が集まってて、そのあとには津波が来たりしてるんだ。
僕も学校に行ってるから、火が大きくなったり津波が来たりする仕組みは知ってるけど、それでも妖精たちのせいも少しはあるんじゃ無いかな?
そう思ってたんだ。
ある日の学校の帰り女の子がビルの上へ立ってたんだ。
僕はその時「自殺だ」そう悟ってすぐにビルの近くに行ったんだ。風をしたから出せばいいって思って。
それで女の子が飛び降りる時風の妖精が居た気がしたんだ。
それでね思い出したの
「僕は妖精じゃ無いから風は出せないんだった」ってね
女の子は目の前に落ちてきて死んじゃった。
僕にはどうすることも出来なくて今までなぜかしなかったんだけど妖精に「お前のせいだ」そう言っちゃったんだ。
そしたらね、妖精が笑ったかと思ったら風と共に僕も妖精と舞い上がって高〜く持ち上がってね、
もちろん僕はさっきも言ったとうり人間だからね、、
自殺って事になってたんだ、
ふふふ、面白いね
え?この文書どうやってるかって?
そりゃあ妖精のいたずらさ、
影絵
手を組んで狐、その次に鷹、あとは蛙
影の形はどれもその動物ににていない気がする。
それでも幼子の私達には楽しかった
拙い手つきで手を組んで何とか出来た形は、は大人と比べると歪だけど達成感があった
ほんの少し授業でやった手影絵は印象に残っている
ゲームなんか無くたって時間が潰せたし、外を歩くだけで発見があった。
手を伸ばせばいずれ太陽すら届く気がした夏、
友達が病気になったらしい
近くの席の男の子で、そこそこ仲が良かった
よく分かってない私は夏休みがあけたら会えるのだろうとただ呆然と思っていた
新学期、男の子はいなかった最初、事病気だのなんだの忘れかけていたけど思い出した。
お母さんにまだ入院していると言われて、早く治ればいいと思った。
お母さんが、男の子のお見舞いに連れて行ってくれた。
男の子は少し印象が変わった気がしたが、何も変わった様子はなかった。「良かった」心のなかでつぶやく。
男の子と三十分ほど話して、手影絵を教えてもらって帰った。
9月を過ぎ10月に差し掛かるころ男の子が亡くなったと知らされた。死ぬなんて知らない私はお母さんに問う
「入院おわり?いつ会えるの?」
お母さんは戸惑ったのち、「もう会えないの」と一言言って悲しい顔をした。
学校はしばらく慌ただしかったけど、次第に落ち着いていった。
ついこのあいだ話した男の子と会えないなんて不思議な感じだったが、悲しかった。
きっとまだ何処かに隠れているんだと思って、普段よく行っていた場所で探してみたがもちろん見つかなかった。
暫くして探すのをやめた。
冬が来て春が来る。やっぱり男の子とは会えなかった。
学年が上がり、要らない物を処分するために見返していたら、授業でやった手影絵の紙を見つけた。
狐、鷹、蛙、ほかにも沢山。
でもそこには男の子に教えてもらった手影絵が無かった。
何とか思い出しながら日に向けてやってみる。
やっぱり何処か歪だがそれでも出来た。
少しだけ桜の影が揺れた気がした
涙
笑顔の花が咲くならきっとピンクやオレンジだ
怒りの花が咲くなら赤
悲しみの花なら青やみどり
涙によって咲く花はきっと色んな色をしているだろう
だって嬉しい涙も悲しい涙もあるだろうから