マシュマロの美脚

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木漏れ日


吸い込まれそうなほど青く輝いている湖
陸には花が咲き乱れ、辺りに生い茂る木々は生命力溢れている。
雲1つ無い快晴でなんだか気分が良い。

つい柔らかい草地へ腰を落としてうつける。
こんな事をしているのは何時ぶりだろうか、最近はバイトに勉強、友達とゲームしたり遊びに行く。
ずっと慌ただしくって疲れていたのかもしれない。

慌ただしいのも楽しいが、小さい頃何でもないことで楽しかった。
いろんなモノを見て触ってそれだけで心満たされた僕は何処へ消えていったのだろう。
少し寂しいがそれが成長だし、知ら無いことを考えない程知ったということなのだろう。

物思いにふけつつ木漏れ日がキラキラと光を刺すこの場所を眺める。本当にここは桃源郷みたいだ。
知らない場所で帰り方も分からないのに何だか帰らなくても良い気がした。

そうやってポヤポヤしていると、葉と葉の隙間からニュッと手が伸びてきた。
気になって手を掴むと引っ張られ湖へ落ちる。
濡れたなぁと思うもぼんやりと見えた手の主は何処かで会った気がした。

「んはっ!」
目が覚めると家とは違う天井。桃源郷から帰ってきてしまった事を悟り少し名残惜しいが、これはきっとそういう事なのだろう。ナースコールを見つけ押してみる。
やっぱりここは病院無のだろう。
バタバタと看護師さんが動いているのがわかる。
覚醒してきた頭は病院の前を思い出す。
飛び出したボール、ソレを往復子供、つい手を伸ばしてしまった後記憶はない。

桃源郷で見た光景は夢かも知れないし幻覚かも知れない。
それでも僕の手を引いてここへ返してくれたのはきっと同じように事故で亡くなった小さな兄だった。

5/7/2025, 4:29:42 PM