マシュマロの美脚

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影絵

手を組んで狐、その次に鷹、あとは蛙
影の形はどれもその動物ににていない気がする。
それでも幼子の私達には楽しかった
拙い手つきで手を組んで何とか出来た形は、は大人と比べると歪だけど達成感があった
ほんの少し授業でやった手影絵は印象に残っている

ゲームなんか無くたって時間が潰せたし、外を歩くだけで発見があった。
手を伸ばせばいずれ太陽すら届く気がした夏、
友達が病気になったらしい
近くの席の男の子で、そこそこ仲が良かった
よく分かってない私は夏休みがあけたら会えるのだろうとただ呆然と思っていた

新学期、男の子はいなかった最初、事病気だのなんだの忘れかけていたけど思い出した。
お母さんにまだ入院していると言われて、早く治ればいいと思った。

お母さんが、男の子のお見舞いに連れて行ってくれた。
男の子は少し印象が変わった気がしたが、何も変わった様子はなかった。「良かった」心のなかでつぶやく。
男の子と三十分ほど話して、手影絵を教えてもらって帰った。

9月を過ぎ10月に差し掛かるころ男の子が亡くなったと知らされた。死ぬなんて知らない私はお母さんに問う
「入院おわり?いつ会えるの?」
お母さんは戸惑ったのち、「もう会えないの」と一言言って悲しい顔をした。
学校はしばらく慌ただしかったけど、次第に落ち着いていった。

ついこのあいだ話した男の子と会えないなんて不思議な感じだったが、悲しかった。
きっとまだ何処かに隠れているんだと思って、普段よく行っていた場所で探してみたがもちろん見つかなかった。
暫くして探すのをやめた。

冬が来て春が来る。やっぱり男の子とは会えなかった。
学年が上がり、要らない物を処分するために見返していたら、授業でやった手影絵の紙を見つけた。
狐、鷹、蛙、ほかにも沢山。
でもそこには男の子に教えてもらった手影絵が無かった。
何とか思い出しながら日に向けてやってみる。
やっぱり何処か歪だがそれでも出来た。
少しだけ桜の影が揺れた気がした

4/19/2025, 5:08:52 PM