【#09. 記憶の地図】
ここら辺だっけなぁ。
そう私は1枚の写真を地図にして
あの頃へ戻ってきた。
地図をもとにあの頃の場所に着いた。
私は朝からの式への準備で疲れたので
ブランコに乗って休憩。
誰がブランコを高く漕げるか競い合ったあの日や、
走り回って鬼ごっこした光景が見えてくる。
すると、2人は遅れてやってきて
「ごめん、ごめん笑 こいつが髪型が決まらないって、ずっと駄々を捏ねてさ。」
「なんで俺のせいなんだよ笑」
家は近いのに中学校を卒業してから
あまり会う機会がないせいか、
2人の顔つきや声の感じが少し違って感じた。
けど、やっぱり仲の良さは変わらない。
「せっかく式に行く予定の時間より早いんだから、
写真撮ろうよ!」
あの頃と同じ並びで、同じポーズで
私たちはシャッターをきる
私のアルバムにはまたひとつ、
古い記憶の地図が広がったのだった。
【#08. マグカップ】
私のマグカップ
私のお気に入りのマグカップ
あなたから私へのマグカップ
友達と飲んだココア
寒い日に2人で子供みたいに布団にくるまって
「あったかいね」なんて2人で笑いあって
私が猫舌なところを見て大笑い
一人で飲んだ温かい牛乳
寒い日の朝、寒くて身体が動かない私に
母は子供の頃を思い出すかのように
温かい牛乳を出してくれた
家を出てからは
古い記憶を思い出すかのように
温かい牛乳と共に子供の頃の写真を見返した
空からの水か、私から溢れた水か分からないけど
顔をびしょびしょにして
あなたの家に行ったとき
あなたは何も言わず、タオルとお風呂、それと
私のお気に入りのマグカップを出して
温かいコーヒーを出してくれた
あなたと同じ屋根の下で暮らすようになったとき
あなたは私にお気に入りのマグカップをくれた
毎週土曜日は私のお気に入りのマグカップともうひとつマグカップを出して2人でゆっくり語らったり、映画を見るって約束してたな
あなたと一緒に飲んだコーヒー
お互いが相談に乗って欲しいときは
あなたのマグカップと
私のマグカップを取り出して誘い合う
ソファにゆったり座って話して
最後は結局私が先に寝てしまう
私のマグカップ
私のお気に入りのマグカップ
あなたのマグカップ
それも私のお気に入りのマグカップ
でもお気に入りのマグカップは1つになった
私は今日もコーヒーを
お気に入りのマグカップに入れて
あなたのマグカップを思い出す
そうして私は
私の甘くて、温かくて、苦くて、
そっと包んでくれる記憶とともに
1杯をそっと飲み干した
【#07.もしもきみが】
私がきみに触れると
私は勝手にきみが好きになって
自分の庭を春の陽だまりのような暖かさにさせてしまう
そして
私に花の香りを忘れなくさせる
しばらくきみと会わなくなると
コロッと私の庭は違う花を植え始め
でも久しぶりにあなたに触れると
その花は私の庭を1面に繁殖していく
いろんな花を受け入れて
すぐに花畑を作ってしまう私の庭
いろんな花に触れることで
どんな花にも絡みついてしまう私の頭の庭は
水やりを忘れてしまう花が生まれる
だから周りの花たちはきっと私を私として見ていなくて
他の綺麗に手入れされ、水やりも欠かさずして貰える
美しい庭で幸せそうに咲いてしまう
そんな庭達がくやしくて努力した
でも
私がどんなに綺麗に手入れして、天気を晴れにして
種を巻いても
私の庭は平凡なまま
私が愛してきた何種類ものの花さえ咲せずに
きみは綺麗な庭で咲いている
たとえ私が最愛の1輪への水やりを忘れていても
もしもきみが私の努力に気づいて
花を咲かせようとしてくれるのなら
きみがまたあの陽だまりの庭へ
私の庭からあなたの庭へ
私の、土で汚れた手を
とってくれるなら
きみの香りを感じたい
きみの香りに包まれたい
【#06. 君だけのメロディー】
声がする。
その声はあなたの同級生と話す声色ではないし、あくまで少しお互いのことを知っている"だけ"の先輩・後輩の関係だけれど、言動からあなたの優しさが分かる。
そして、6本の弦で音の高さを変えてメロディーと共に流れる言葉を出す。
あなたの優しさの溢れるメロディーが好き。
笑う。
あなたの落ち着いた笑い声。
あなたの笑い声が好き。
あなたから生まれるリズム。
あなたに強く握られたスティックは、何種類もあるリズムを生み出す場所を正確に使い分けている。
そして、目にも見えぬ早さで
あなたから生み出されるリズムを自由に、
楽しそうに刻んでいる。
あなたの生み出すリズムが好き。
あなたの花が咲いたような微笑みが好き。
私の中で高鳴るメロディーが生み出されるのは少し
体が熱くなる。
でも私は知りたい。
あなたと私の関係が変われるのなら、
変えれるのなら。
あなただけのメロディーを私にも聞かせて欲しい。
あなたの本当のメロディーが知りたい。
【#05. I love】
私は果汁20%の甘い甘いオレンジジュースを飲みながら、次何歌おうかなぁと考える。
結局、歌う曲が決めれず、スマホを開き、自分用のプレイリストを開いた。
次は、マカロニえんぴつの愛のレンタルでも歌おうかと考えながら
「I love 」や「好き」、「愛してる」っていう愛を伝える言葉が入ってる歌詞がよくあるなと気づく。
やっぱり、愛を歌う曲は多幸感に溢れるものが多いなと脳内で恋愛ソングを再生させつつ、
目の前で真剣に画面を見ながら歌うあなたを見つめる。
歌っていたのは聞いたことはないが、画面の歌詞を見るに、失恋ソングだろう。
失恋ソングのあとに恋愛ソングを歌うのかぁと考えつつ、
自分が歌う番になった。
それでもあなたは、手のひらの画面に夢中で見てくれなかったけど、
私は気にせずに歌い出した。
「愛していたいのに
消えてなくなってしまうような
やめられないよ_____」
歌いつつ、
心の中であなたに問う。
あなたはいつになったら行き止まりの道を
通してくれるの?