お題《届かない……》
綴ることで強くなった
綴ることで弱くなった
綴ることを杖にした
命をつづり
夢をつづり
自分をつづる
それでもはてしなく つづく とおい みち
お題《好きになれない、嫌いになれない》
お題《好きだよ》
“音”は人を喜ばせるための魔法
そう信じて疑わなかった
ひとりぼっちの学園のガーデンで
泣いていたら
そよ風に乗ってピアノの音色が舞っていた
耳に届けられたその音色は
“ああ……。あの人の宝物だ”
私は自然と涙していた
音楽に詳しくなくとも人を笑顔にしたり涙を誘ったり
“音楽は宝物だ”とあの人がそう表現していた
でもあの人は――音楽で私に幻想をかけた
“すべて忘れる”ように、と
でもそれは私を遠ざけるための魔法
“お前がいれば世界は色鮮やかになっていた。だからこそ、お前に、俺の傍にいて欲しくないんだよ”
学園のガーデンで密やかに紡がれる音の葉魔法
“魔法はいつも人の傍にあるよ。誰だって誰かを笑顔にする魔法がある”
あなたに出会って恋の音の葉を知る
「あなたが伝えてくれる“好き”は、こんなにもたくさんの音の葉が聴こえるんだね」
お題《桜》
春の庭園に迷い込む
これは神隠しか
それとも春の魅せる夢なのか
桜はいつの時代でも惹かれて
《途中書き》
お題《君と》
異世界と現実を結ぶストーリーテラー
キャラメル色のノスタルジー漂う紳士服
「やあやあようこそ。君の望む僕が、やって来ましたよお嬢さん。なになに? そんなの知らない? ――へえ。じゃあ君は何故“現実”に興味がないの? そんなことない、ってのは無しね。だって僕には“そういう子”がわかっちゃうからさ」
甘い焼き菓子のようににこにこ笑う青年
でもそれはどこまでいっても“不気味”だった
“そういう子”
引っ掛かる物言いだ
「取り繕うなんて無理だよ。“嘘”というものは、どこまでいっても“嘘”でしかないんだから。“日常”に辟易してるんだろう? 君は“現実を適当に生きてる”でしょ。つまらない、くだらないって。――それなら」
青年はふいに真面目な顔で花を降らせた
《途中書き》