椿灯夏

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3/26/2025, 1:10:41 PM

お題《七色》


毎朝僕は色をみる


これがどれだけ幸せなことか


あの頃の僕はちっとも気づかなかったんだ




僕が行けなくなった外の世界は

もう見たくない日常

狭い世界の小さな箱庭

歪で息苦しい水槽


そんな時僕を誘いに来た

《カーマイン》


「お前が嫌なら一生出なくてもいいじゃん。でもさ外だけじゃないんだぜ、世界って。オレが連れてってやる、トクベツにな」


カーマインの首にかかっている砂時計の青い砂が

光纏い 世界を ゆらす



僕にはじめてできたともだち


カーマインの瞳に広がる海が


僕に夢を見せてくれる



《途中書き》


3/25/2025, 12:40:13 PM

お題《記憶》

凪いだ水鏡にひと雫波紋が物語を捲る

枯れ果てた冬から泡沫の春に紡がれ

神代から現代へ贈る記憶のおとぎばなし



「氷雨様は唯一無二の神代の歯車のお方なのだから。あなたもそろそろ、わきまえなさいな」


氷雨と同じ街で育って 同じ風景を見て


一緒になろうと花白の誓いをしてくれた


でもそんなものは簡単に破り捨てられてしまう


この世界でも


ああそうやって繰り返すんだ咎の歴史を


「氷雨様」って呼ばれるあなたは私の知らない人に見えた


詩で賛えられ 従者を連れ歩く


もう私を“白椿”とは呼んでくれない


この物語はこれが正しいのだろうか

この物語の中で


――私とあなただけが幸せになれないなんて



なんて馬鹿馬鹿しいおとぎばなしだろう



《途中書き》





3/24/2025, 11:11:31 AM

お題《もう二度と》

神様が始まりに創った世界は花のように散った

神様はたいそうお嘆きになった

神様が望んだ物語のようにはならなかった


それは悲劇か希望の始まりか


神様は最後にもう一度世界を創った

“永遠の鳥籠”を


永遠に廻り続ける世界

死を遠ざけ永遠に終焉など訪れない世界を

花のように散らない世界を



時は流れ



運命は再び巡り始める



異能《終夜》を持ったマレビトの少年と


神様の想いを受け継いだ少女は


長い長い時を得て出会う



でもそれは世界を揺るがす物語の始まりだった


3/24/2025, 2:44:28 AM

お題《曇り》


一度も晴れたことがない

《灰霧の町》

灰の雨が降り

年中分厚い書物のような曇が町を覆う

「たとえここが、世界のサイハテでも生きていかなきゃならねぇんで。旅人になる気もありゃしませんねぇ」


高木のように背の高い青年が癖のある喋り方で語る


青年はこの町の《霧の案内人》

なんでも識っているが

問いかけには答えない

その癖、自分の問いかけに答えない者は客とみなさない


いつも変わった異国の服を纏い

神出鬼没に現れては相手を奇妙な世界へ誘い込む

“価値あるものはすべて自分が決める”


それは青年が“お金”に価値がないといえば

何の価値もないということだ


価値はその者によって変わる

その者の世界を游ぐなら

その者の価値となるか去るか、だ


《途中書き》


3/20/2025, 10:47:43 AM

お題《手を繋いで》


鳥の翼を持った流れる星の瞳に導かれ

僕は異世界転生した

彼女の記憶の中の世界へ

彼女は彼女では探し出せない

抜け落ちた記憶を僕に託して


《途中書き》



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