椿灯夏

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3/25/2025, 12:40:13 PM

お題《記憶》

凪いだ水鏡にひと雫波紋が物語を捲る

枯れ果てた冬から泡沫の春に紡がれ

神代から現代へ贈る記憶のおとぎばなし



「氷雨様は唯一無二の神代の歯車のお方なのだから。あなたもそろそろ、わきまえなさいな」


氷雨と同じ街で育って 同じ風景を見て


一緒になろうと花白の誓いをしてくれた


でもそんなものは簡単に破り捨てられてしまう


この世界でも


ああそうやって繰り返すんだ咎の歴史を


「氷雨様」って呼ばれるあなたは私の知らない人に見えた


詩で賛えられ 従者を連れ歩く


もう私を“白椿”とは呼んでくれない


この物語はこれが正しいのだろうか

この物語の中で


――私とあなただけが幸せになれないなんて



なんて馬鹿馬鹿しいおとぎばなしだろう



《途中書き》





3/24/2025, 11:11:31 AM

お題《もう二度と》

神様が始まりに創った世界は花のように散った

神様はたいそうお嘆きになった

神様が望んだ物語のようにはならなかった


それは悲劇か希望の始まりか


神様は最後にもう一度世界を創った

“永遠の鳥籠”を


永遠に廻り続ける世界

死を遠ざけ永遠に終焉など訪れない世界を

花のように散らない世界を



時は流れ



運命は再び巡り始める



異能《終夜》を持ったマレビトの少年と


神様の想いを受け継いだ少女は


長い長い時を得て出会う



でもそれは世界を揺るがす物語の始まりだった


3/20/2025, 10:47:43 AM

お題《手を繋いで》


鳥の翼を持った流れる星の瞳に導かれ

僕は異世界転生した

彼女の記憶の中の世界へ

彼女は彼女では探し出せない

抜け落ちた記憶を僕に託して


《途中書き》



3/17/2025, 3:05:24 PM

お題《叶わぬ夢》


忘れられた玉座に蔦が這う

色褪せた王のいない城

幻想の人影が揺れ動く

王を探して

もう二度とここには戻らぬ主の帰りを待つ


――いつまで待つのだろうか


王は終焉の地でとうに果てたというのに

死んだら夢も何もない

残るものなどありはしない

屍となって砂塵となるだけだ


――そうか。それが“幸せ”か


オレと“あいつ”のように

心の奥底に鍵をかけた

いい記憶だって

見方を変えれば悪夢でしかない


――王よ。あなたは何を望む?

叶わぬ夢でも――


記憶の中の王に語りかける


「――――」


…………そうか


最初からすべてわかっていた


――あなたは生まれながらの“王”だな


《途中書き》

3/11/2025, 1:10:48 PM

お題《星》


天幕の向こうに星火が灯る

旅人の行く末を示す羅針盤

いつか邂逅を果たすその時まで

それを道標に狭間を渡る

散りゆく花に誘われて

新たな物語を紡ぎだす


星空の向こう竜の詩を聴いた

お伽話のように懐かしく

伝承のように神々しい


いつかの記憶がよみがえる


異端扱いされた少女と詩季綴りの少年

ふたりは出会うはずのない

世界から泡沫となった、ふたり



《途中書き》

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