椿灯夏

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2/24/2025, 12:01:58 PM

お題《一輪の花》


永遠に咲き続けることができたのならば


あなた様の心に泉をもたらすことができたのでしょうか


枯れゆく運命を変えることはできない


あなたは黎明の不死鳥で


わたしは泡沫の花


「恋をすればお前は――もう花にもなれない。もう、お前はお前でいられない」


魔女の青年が告げたのは残酷な真実



それでもかまわないわ


だってわたしは…………



「オレにとっての花はおまえだけだ」




ブルーモーメントの空を映したようなひとりきりの花は


黄昏の狭間


焼き果てた森の残骸で



黎明のあなたに拾われた


2/23/2025, 11:48:15 AM

お題《魔法》



「“祈り”は一番簡単な魔法だよ。――深い意味ではちがうけど。まあ君にはどうでもいいことか」



祈りは魔法。

ただしそれは現代では通じる魔法じゃない。

夜明けより遠い遥か彼方の時代だ。

夜が支配していた頃の。



――そして。


私には魔法が使えない。


現代では珍しい、希少種として扱われている。


「ああ見て。夜よ。あの忌まわしき夜の……」

「ああ……呪いの子か」



夜は現代では嫌われている。


遠ざけられた夜。


《途中書き》

2/22/2025, 12:27:38 PM

お題《君と見た虹》


これは時の霧がみせる記憶

記憶の神隠しに遭った者が失くしたもの

あるいは――手離した、あったはずの記憶


朧気に存在する霧の森

陽を拒み

夜の底に沈んだ幻

森の奥から聴こえるのは

物語を綴る音

物語を詠む音

記憶の音

ただそれだけが、永遠に流れてゆく



遠いどこかの国の童話に描かれた

美しい虹のはし



おれは識っている


でもそれはおれじゃない、おれの、


錆びた記憶の物語




「――虹の色は感情で彩っているの。今私たちは幸せだから――だね」




――虹の色がみえない



記憶が混ざり合う


ここではすべてが偽りで、不確かだ

2/18/2025, 10:51:08 AM

お題《手紙の行方》
 

風花のように遠くへ流浪する


想いの言ノ葉を探して


何処かにある自分だけの特別な言ノ葉探して


何処へゆけるかわからないけど


何処が終着点かわからないけど


それが幸せで


それが居場所


終わらせるよりいい


旅人でいよう


何処へゆけるか風に身を任せて

2/17/2025, 3:17:55 PM

お題《輝き》

「なあ! 昨日のニュース見たか!?」


真夏の寄宿舎に響く真夏に負けないくらい

熱を帯びた声

「竜星群だろ。みんなあっちこっちで、その話で持ちきりだからな。ラズで10回目だよ、言ってきた奴」

「くっそー先越されたかあ。俺が絶対一番だと思ったのに」


崩れ落ちるこいつはラズライト

透きとおった天青の双眸の瞳が綺麗な

明るく嘘がつけないクラスメイト

竜星群――真夏に星の海を渡り竜の群が、流れ星のように
この地上へ流れてくることから、そう言われている


人間は幻想が好きだ

お伽話のように語られていたファンタジーの竜

それが真実として存在していたならば

それは夢が叶った証明


「なあカラクサ、一緒に竜星群見に行こうぜ。そんでもって竜と友達になって冒険したいな、お前とさ」


――翡翠ソーダ水の海


こいつといると、ずっと夏の季節を泳いでいるみたいだ


心に広がる夏の風景に思わず笑みがこぼれる



「ラズが心配だから行くよ、一緒に」



願わくばこの先もずっと君のトナリで


季節を泳いでいきたい

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