椿灯夏

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お題《君と見た虹》


これは時の霧がみせる記憶

記憶の神隠しに遭った者が失くしたもの

あるいは――手離した、あったはずの記憶


朧気に存在する霧の森

陽を拒み

夜の底に沈んだ幻

森の奥から聴こえるのは

物語を綴る音

物語を詠む音

記憶の音

ただそれだけが、永遠に流れてゆく



遠いどこかの国の童話に描かれた

美しい虹のはし



おれは識っている


でもそれはおれじゃない、おれの、


錆びた記憶の物語




「――虹の色は感情で彩っているの。今私たちは幸せだから――だね」




――虹の色がみえない



記憶が混ざり合う


ここではすべてが偽りで、不確かだ

2/22/2025, 12:27:38 PM