椿灯夏

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2/22/2025, 12:27:38 PM

お題《君と見た虹》


これは時の霧がみせる記憶

記憶の神隠しに遭った者が失くしたもの

あるいは――手離した、あったはずの記憶


朧気に存在する霧の森

陽を拒み

夜の底に沈んだ幻

森の奥から聴こえるのは

物語を綴る音

物語を詠む音

記憶の音

ただそれだけが、永遠に流れてゆく



遠いどこかの国の童話に描かれた

美しい虹のはし



おれは識っている


でもそれはおれじゃない、おれの、


錆びた記憶の物語




「――虹の色は感情で彩っているの。今私たちは幸せだから――だね」




――虹の色がみえない



記憶が混ざり合う


ここではすべてが偽りで、不確かだ

2/18/2025, 10:51:08 AM

お題《手紙の行方》
 

風花のように遠くへ流浪する


想いの言ノ葉を探して


何処かにある自分だけの特別な言ノ葉探して


何処へゆけるかわからないけど


何処が終着点かわからないけど


それが幸せで


それが居場所


終わらせるよりいい


旅人でいよう


何処へゆけるか風に身を任せて

2/17/2025, 3:17:55 PM

お題《輝き》

「なあ! 昨日のニュース見たか!?」


真夏の寄宿舎に響く真夏に負けないくらい

熱を帯びた声

「竜星群だろ。みんなあっちこっちで、その話で持ちきりだからな。ラズで10回目だよ、言ってきた奴」

「くっそー先越されたかあ。俺が絶対一番だと思ったのに」


崩れ落ちるこいつはラズライト

透きとおった天青の双眸の瞳が綺麗な

明るく嘘がつけないクラスメイト

竜星群――真夏に星の海を渡り竜の群が、流れ星のように
この地上へ流れてくることから、そう言われている


人間は幻想が好きだ

お伽話のように語られていたファンタジーの竜

それが真実として存在していたならば

それは夢が叶った証明


「なあカラクサ、一緒に竜星群見に行こうぜ。そんでもって竜と友達になって冒険したいな、お前とさ」


――翡翠ソーダ水の海


こいつといると、ずっと夏の季節を泳いでいるみたいだ


心に広がる夏の風景に思わず笑みがこぼれる



「ラズが心配だから行くよ、一緒に」



願わくばこの先もずっと君のトナリで


季節を泳いでいきたい

2/16/2025, 1:42:08 PM

お題《時間よ止まれ》


春は零れ落ち

花弁となって空へと逃げていく


魔王様と手にした日常が幻想でもいい

魔王様と交わした約束が自分にはちゃんとある

魔王様と紡いだ泡沫の日常は鮮やかに胸の奥で咲いている


リシュティアの手の中には暁の薔薇の花びらがある


涙の雫を吸ったその花が彼女に届けたのは


彼が生きた物語の証だった


すべては雨の日から始まった

 
どんな残酷な運命も夜明けに変わる


カタストロフィさえもそれは変えられない


《途中書き》

2/15/2025, 11:25:28 AM

お題《君の声がする》


朱に染まりゆく空はまるで血

地上を煌々と燃やす炎の花が天をもあかくする

この夜《世》こそが地獄かもしれない

下弦の月が見下ろす夜

すべてが一変した


君の声が

君の声は


もう、きこえない


涙の雫をすすり

不変の覚悟を心奥に抱いて

ひたすら地を蹴る


いつもきこえていた君の声が

いつもはなしかけてくれた君の声が


この世から悪は絶対なくならない


何故ならばそれは――人間がこの世界にいるからだ。




俺はそれを良しとはしない。


でも君が。


君が――――望むから。




俺は。



俺のやり方で、この世を正す。


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