お題《始まりはいつも》
どこの世界にいっても黄昏の空に、淡い雨が降る。
でも。おまえは隣にいない。
孤独の空白を埋めてくれたあの日、おまえは夜明けの空のように道を照らしてくれた。――わかっていたんだ、おまえとの出会いは終焉への、始まりだと。
それでも俺は何度でも神に願うよ。
――この世界に神とやらがいるのならば。
『わたしがいるよ。どこにいても、あなたを守るよ』
ルリシアと出逢い花が降り始め、そして、花が散り始めた。
お題《忘れたくても忘れられない》
桜面影通りに行けば《あなたの心にある、あの人によく似た大切な人に会える》という、なんとも不確かで怪しい都市伝説がある。
真実不明、信憑性ゼロ。
さっき一気飲みしたミネラルウォーターのせいで、胃が少しきりきりする。
《現実みなよ》と友人に冷たく吐かれた言葉に苛ついて、私はひとり、夜酒にふけっていた。
頭の中をリフレインする、烏の青年のあの言葉。
《世の中真実か嘘かなんて、大したことじゃない。大切なのは自分にとっての、得るものだ》
私は、冷たい風が彷徨う夜の町へと消えてゆく。
一輪の花を握りしめて。
お題《鋭い眼差し》
それは永遠とも刹那とも想える時間だった。
時が疾風のように駆け去ったようにも、時が凍りついたようにも感じた、魂の語りでもあった。
瞳と瞳が、真実のみを語る。
けっして偽りなど、そこには存在しない。
明日白銀の月が忘れじの国の闇を炙り出す夜に、世界は終焉か黎明を迎えるのだ。
そこにお前がいなくとも。
お題《喪失》
心が錆びていく、ゆっくり、おだやかに。
「だいすきだよ」
あなたの言葉が、きらい。
気持ちが空白になってしまったのがわかるから。
でもいえない、いいたくない、わたしをゆらす。
「さよなら」
わたしの笑顔は不変の嘘。
お題《胸の鼓動》
それは、わたしを変える四季彩の鐘。
不変じゃない、一秒ずつ変わってゆくんだ。
君と、わたしの関係のように。