お題《忘れたくても忘れられない》
桜面影通りに行けば《あなたの心にある、あの人によく似た大切な人に会える》という、なんとも不確かで怪しい都市伝説がある。
真実不明、信憑性ゼロ。
さっき一気飲みしたミネラルウォーターのせいで、胃が少しきりきりする。
《現実みなよ》と友人に冷たく吐かれた言葉に苛ついて、私はひとり、夜酒にふけっていた。
頭の中をリフレインする、烏の青年のあの言葉。
《世の中真実か嘘かなんて、大したことじゃない。大切なのは自分にとっての、得るものだ》
私は、冷たい風が彷徨う夜の町へと消えてゆく。
一輪の花を握りしめて。
10/17/2024, 11:27:00 AM