お題《ここではないどこか》
風花となって美しい季節の旅路を綴りたい。
日常の美しさを知るのなら、世界の美しさを識れ。
お題《君と最後に会った日》
紅葉も散り始め、秋は終焉を唄い始める。
季節も不変じゃない。
だからこれは必然。
僕が引き止める術は、ない。
「ねえ」
彼女が歌うように言った。
「美しいだけが世界じゃない。でもね、残酷なだけが世界じゃないよ」
その瞬間すべての音が消えた。
彼女の笑顔が記憶に焦げつくように、傷をつけた。
お題《日常》
常春の町。
永遠の春。
桜の花弁が晴れ渡る空を游ぐ。その真下では楽しそうにはしゃぐ花弁を集める子供たち、屋台の花見酒のあまくやわらかい香りがして自然とお腹が減る。
冷蔵庫に向かい開けてみる、きっと何かあるはず……そう思ったが期待はずれだったようだ。
「花弁のジャムも星屑魚のソテーもニナの実サラダもないなんて、うそでしょ……!?」
食事はすべての者の原動力なのに。がっくりと肩を落としどうしようかと思案しかけたところへ、ベランダから重たい音が響く。
慌てて見に行けば――そこにいたのは、南天の実のように赤い髪の、翼をはやした少年だった。耳には羽根の形をした耳飾り。
「おい持ってきてやったぞ、感謝しろ」
偉そうな物言いに少しだけむっとする。
「朱里が連れ去ったんだから、面倒見るのは当然でしょ!」
朱里が持ってきた食べ物に感謝しつつ、言い返してやる。これくらいは、いいだろう。
今夜は朱里の好きなすき焼きにしようと心に決めて。
お題《相合傘》
玉響の時を想い紡ぐ。
お題《落下》
言の葉が支える世界の理から落ちてゆく。
世界の真実を識る者は。
知った者は。
――きっと同じ結末だ。
もう後戻りはできない。
もう日常には戻れない。
それでもきっと……。
「必ず、また帰ってくるよ。あなたの、もとへ」
今頃私がのこした、最後の言の葉に触れているかな。
……泣いてくれるかな。
きっと、大丈夫だよね。
それは、永遠とも刹那ともいえる、愛おしい時間だった。――大切な人を想うのは。