月下の胡蝶

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お題《日常》


常春の町。


永遠の春。



桜の花弁が晴れ渡る空を游ぐ。その真下では楽しそうにはしゃぐ花弁を集める子供たち、屋台の花見酒のあまくやわらかい香りがして自然とお腹が減る。


冷蔵庫に向かい開けてみる、きっと何かあるはず……そう思ったが期待はずれだったようだ。


「花弁のジャムも星屑魚のソテーもニナの実サラダもないなんて、うそでしょ……!?」



食事はすべての者の原動力なのに。がっくりと肩を落としどうしようかと思案しかけたところへ、ベランダから重たい音が響く。


慌てて見に行けば――そこにいたのは、南天の実のように赤い髪の、翼をはやした少年だった。耳には羽根の形をした耳飾り。


「おい持ってきてやったぞ、感謝しろ」


偉そうな物言いに少しだけむっとする。


「朱里が連れ去ったんだから、面倒見るのは当然でしょ!」


朱里が持ってきた食べ物に感謝しつつ、言い返してやる。これくらいは、いいだろう。




今夜は朱里の好きなすき焼きにしようと心に決めて。




6/22/2024, 11:45:30 AM