お題《君の目を見つめると》
金木犀の海が咲くんだ。
心の中で炭酸の弾ける音がする。
時折吹く微風が、ふたりの時間を淡く満たして。
ずっと、続けばいいのにと心の泉で願う。
お題《星空の下で》
願いは星となり、星の海となる。
星の魔法使いの真実は《願う》こと。
叶えることじゃない、叶えることは人の役目だ。
「星は人を導くだけ。星の魔法使いは道しるべをつくるだけ。でもそれは、決して意味のないことじゃない、人が果たしてそれを本当に理解できるかは……結局人次第」
叶える力がないわけじゃない。
でも星の魔法使いは、《願う》ことしかできない。
お題《エイプリルフール》
「この箱庭から出られるんだよ、この星の鍵さえあれば」
水のように澄んだ微笑みだった。
この箱庭からは出られない。そうずっと聞かされ育ったニーナはまさか、と思いながらもその甘い蜜のような言葉を信じてしまった。
「はい、あげる」
「カインは行かないの?」
「うん。ぼくは、いいんだ」
この時は不思議に思わなかった。だってカインはいつも優しくて、本当の兄のようだった。――だから氷結の森を抜けようと際、星の鍵が粉々に砕け散った瞬間――心が夜の底へ、壊れたのは箱庭から出られるかもしれないという希望なのか、カインへの信頼なのか、何もわからなかった。
果てしない嘘しかこの箱庭にはない。
知っていれば、壊れなかったのに。
お題《幸せに》
月夜の海岸。
波に運ばれる淡いの花。
手を繋いで灯した愛も枯れ果てて。
今頃あなたは――恋人と幸せを語り紡いでいることでしょう、この場所で別れの歌を聴いた日は悪夢だったけれど、今は。
確かに願うのです。
あなたの笑顔が再生される。
記憶の笑顔を道しるべに。
お題《好きじゃないのに》
「あなたには――が似合うわ」
「――と――、どっちにする?」
私は曖昧に笑って、興味なさげに適当にえらぶ。
心を殺して閉ざして生きる人生は――無価値以外の何者でもない。
だから。
月灯りのように、静かで穏やかな笑みを浮かべて。
「大丈夫。ゆっくり選ぼう、いくらでも待つよ。君の言葉、なんでもいい。聞かせて?」
それは、静かに涙雨が降る時間でした。