椿灯夏《少しずつ削除します》

Open App
2/8/2023, 11:13:12 AM

お題《スマイル》





遠く遠く聴こえてくる祭囃子。

朱い金魚の提灯がユラユラと妖しく揺れる。


誘われるようにして、訪れたその祭りは誰も彼もが狐面を被り素顔を隠す。ここではこれが《フツウ》なのだろうか――少女の鮮やかな青い朝顔の着物は、どうしたって目立つ。


うつむき加減に歩いていると、ふいに声をかけられた。


「よくきたね。沙也加」

「私の名前――」


カラカラと風に廻る風車を持った狐面の君がたたずむ。



「この世界を泳いでみない? 沙也加なら遠くへ、行けるよきっと」



一瞬心の水面に、薄荷水のように透きとおった誰かの、その笑顔が浮かぶ。



どんな昏い空の下でも輝き続ける――少女は誰の面影だろうとぼんやりと思う。






2/7/2023, 10:50:39 AM

お題《どこにも書けないこと》




命を忘れた者は愚者でしかなく。


優しさを忘れた者は空白でしかない。



2/6/2023, 1:00:48 PM

お題《時計の針》


留まることも戻ることもなく。


紡ぎ続けるあなたの物語。



いつか地上から忘れ去られてもだいじょうぶ。



あなたの物語は永遠だから。


後悔さえもそれは物語の音となる。

2/6/2023, 4:08:26 AM

お題《溢れる気持ち》



夢が湧いてくるように。


時を刻み続けるように。



この胸を満たす金色の月灯り。


もう二度と離れたくない――もう二度と。




たとえどんな辺境の遠い異国の地へ赴くことになっても、必ずこの腕の中へ戻ってこよう――彼から香る故郷の花が、あらためて私にそう強く誓わせる。




でもいくね。


あなたを死から解放するために。



「――あの言葉をくれる?」


「いいよ。お前が望むなら何度だって言ってやる」




「――――」




ほら、心にたくさんの星が降る。



あなたの言葉は魔法みたいだね。




1/4/2023, 1:23:13 PM

《幸せとは》


心に月があること。


心に月がないと――昏くて寒くて、凍えて死んでしまうよ。



心の月は幸せの証であり道標。

Next