椿灯夏《少しずつ削除します》

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7/19/2022, 12:00:17 PM

お題《視線の先には》



秋の雪がはらはらと散りゆく街は黄昏色に染まる。


切り取られた季節は繰り返す。



ある青年は言った。「ここは誰かの夢。誰かの季節。失いたくない、このままでいたい――“繰り返す”にはじゅうぶんだろう?」



ある少女は嘆いた。「想いは時に人を苦しめます。それでも想わずにはいられないでしょう、わたしたち人は」



ある少年は、それを絵に描きのこす。


「僕にできることは、絵を描くことだから。この街を描くんだ。それがきっと救いになるって信じてる」





誰かの夢。


誰かの季節。



たったひとりの誰かを救うことが、この季節の先に繋がるんだ。



7/18/2022, 11:22:27 AM

お題《私だけ》



長い旅路の果ての足跡は 私が今まで歩んできた軌跡


誰にも歩むことなんてできない



私だけの旅


私だけの宝物



《あなた》だから、ここまで来れた


《あなた》だけの旅の


《あなた》だけの物語を聞かせて?



紅茶に星屑を落として 心地よい風に揺られて


物語は始まる――



7/17/2022, 11:51:03 AM

お題《遠い日の記憶》


永遠に色あせないあの日の夢。


夢を語ったあの日――竜とはじめて、永遠の絆が生まれた。




竜を生涯の絆《パートナー》とし生きる竜黎《りゅうれい》の民。


ともに学び、ともに働き、ともに夢をみる、伝承の民。




だけど、俺とその竜は……。



竜は部屋の片隅に丸くなって眠っている。黎明を思わせる美しい色をした竜だ、いつも日常をともに過ごしてても――俺にはまったく興味がない。



「あのさ、レクイエムの丘の向こうに、美味しい月菓子の店ができたんだって。今度一緒に行ってみないか?」



竜は相変わらず何の反応も示さない。



……俺、どれだけこいつに嫌われてるんだろう。


本当は。本当はもっと、仲良くなりたいんだけど……。やっぱりうまくいかないよな。


俺の夢は――永遠に叶わないのかもしれない。





いつものように、レクイエムの丘へいくと、少年が笛を奏でていた。その傍らには夜色の竜がいる。この丘には竜が好きな花が咲いているから、いつも来るが――この少年とははじめて会う。



露が光る金色の花に囲まれた少年がこちらに気づく。



「こんにちは。ここはいいところだよね」

「……ああ」


一目でわかる。この少年と夜色の竜の、色あせない絆。一瞬たりとも揺らいだりしない、強い絆が。



「うらやましいな、君と竜の絆が。俺にはないものだ」


「――僕もはじめはそうだった。竜は永遠とも知れない長い時間を生きるもの、だからこそ大切なんだ絆は。あなたはどれほど竜と語った?」


「そ、それは」


少年は服の裾をひく夜色の竜の顎を撫でてやる。その表情は幸福に満ちていて、心にゆっくりと沁み渡っていくようだ。


「だったら、語ってあげて。あなたの夢を」

「夢を……?」

「うん、きっとあなたの竜もそれを待ってるんじゃないかな」



その言葉におされて、俺は竜に語った。


俺の夢を。



この日生まれた絆は永遠だ――。



あの少年と夜色の竜と会うことは二度となかったけれど、きっと夢を叶えることができたのなら――いつかまた。



7/16/2022, 10:29:50 AM

お題《空を見上げて心に浮かんだこと》


永遠なんて存在しないのだとしても


心がそう感じる瞬間があったとしたのなら

それは《永遠》なんだと想う



あなたの感じたその永遠を大切に


時につらく想う感情も



空が移ろうように


季節が色を変えるように



変わってゆくから 


日々流転してゆくから



ひとつひとつがあなたの唯一無二


7/15/2022, 11:06:45 AM

お題《終わりにしよう》


あなたが好きでしたよ、ほんとうに。




真実はいつも残酷だ。


それでもあなたを想うなら、別れなければ。


この先に木漏れ日のような明日はない。




「――きっと天国にはいけないでしょうねぇ」



たくさん騙して、人の幸せを奪っておいて、そんな都合のいい神様はいないだろう。



それでも僕が描いた未来には、あなたがいた。



一緒に散歩して、買い物して、食事して。あなたに似合うもの探して。それだけでよかったのに、それ以上に求めて繋がって。――あなたの香りを知ってしまった、ほんとうに罪深い。



さようならと、心の中で終わりを告げる。





「――さあいきましょうか。地獄でもどこへでも」



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