NoName

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6/2/2024, 10:39:21 AM

私は正直だけが取り柄!

「それでね、昨日やっと教えてくれたんだ。あの事件を仕組んだのは彼女だよーって」
「そうだったのね。これでターゲットが絞れたわ。ありがとう」

私には嘘をつく度胸なんてない。
それだけなのに、何故かみんな私に優しくしてくれて、全部教えてくれる。

「ねぇ、私えらいっ?すごいっ?」
「偉くて凄いわ。いつもありがとう」

すり寄ると頭を撫でてくれた。

「……私のこと好き?」
「もちろんよ。愛してるわ」

ノータイムで返事してくれたのが嬉しくて、もっと近くに体を寄せた。

私は正直だけが取り柄!
だから、私とは正反対の、嘘が上手なこの人が大好き!

4/5/2024, 11:49:54 AM

Tシャツにサンダル姿で家を飛び出した。
人生初の家出というやつだ。
行くあても、帰るつもりもなく、街を駆けた。

ある程度走って疲れた頃、小さな公園を見つけた。滑り台と砂場しかない本当に小さな公園だ。
思い返せば、母の身長を越した辺りから遊具はおろか公園にすら近づいていなかった。
けど、今のオレなら。

滑り台の階段を駆け上がる。
ひとつひとつの足場が小さくて、間抜けな足取りになった。オレしかいない公園に変な足音が響く。
そして登りきった勢いのまま滑りおりる!
と思ったが、図体のデカさが邪魔をして、滑り台に寝そべる形になった。

何気なくそのまま空を眺める。
雲ひとつなく、大小様々な光があちこちに散らばっていた。
柄にもなく星が綺麗だと思った。
オレはなんだかおかしくなって、少し笑った。

4/4/2024, 2:22:56 PM

暴走した兄が市街地へ向かったという連絡を受け、私はバイクに飛び乗った。
いや、もう兄とは呼べないか。
私の兄の体をベースにした、機械人間が逃げたのだ。
逃げていく人たちの合間を縫い、どんどんバイクを飛ばす。

一度暴走してしまった機械人間を拘束することはほぼ不可能だ。止めるには、完全に機能を停止させるほかない。つまりは死。
そして、私たち警察には暴走した機械人間の強制機能停止が認められている。

大きい音を立てて暴れる機械人間は案外あっさり見つかってしまった。
私はその姿を見るなり、バイクに乗ったまま光線銃を何発か撃った。迷いはなかった。迷わないように考えるのをやめていたから。
光線銃は、こちらに背中を向けていた機械人間にこれまたあっさり当たり、力を失った機械人間はその場に大きな金属音を響かせながら倒れた。
自分に考える時間を与えないよう、すぐに上司に連絡を繋いだ。

上司に報告しながら、その体に近づく。
瀕死の状態だ。顔は依然見えない。
警戒は解かないまま、上司に報告を続けた。
しばらくして。ピッ、という電子音とともに通信が切れる。そして無音。
その時だった。
この状態の機械人間に、元の人格なんて残っているはずがない。
それでも、聞こえた気がした。

「___それでいい」

私は少しだけその場に留まってから、返事をして、ゆっくりバイクに乗って帰った。

「私だって、お兄ちゃんが生きてくれてるだけで良かったのに」

3/25/2024, 12:36:34 PM

「音楽好き?」
「何その質問。変なこと聞くんだね」

バンドメンバーの質問を笑ってやり過ごす。
『音楽とか、別に好きじゃないよ』
心の中で答えた。
好きじゃないけど、私は今日も音楽を続ける。

「俺は好きだよ」
「そっか」

なんとなく、手に持っていたギターをジャーンと鳴らした。

3/19/2024, 2:49:43 PM

「つまり、殺人犯はこの中にいる!」

ミステリー小説よろしく、関係者を集めたホールの真ん中で探偵が宣言した。
その言葉を聞いて、周りの人たちが口々に騒ぎ出す。
その間にも、探偵は事情聴取を始めたようだ。
彼のギラギラとした眼光に、犯人を絶対捕まえるという強い意志を感じ、こちらも期待してしまう。
犯人を暴いてほしいというのは僕も同じだった。
どうやって、探偵は犯人を特定するんだろうか。

どうやって、僕にたどり着くんだろうか。

アリバイから?凶器から?動機から?
僕の仕掛けをどうやって解いてくれるのかな。
楽しみで、胸が高鳴った。

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