テーマ“この世界は”
この世界は、誰かの創作した世界かもしれない。
私達は、その誰かの描いている
登場人物に過ぎなくて
過去の記憶も、実際に経験した事ではなく
その誰かが考えただけの、設定でしかないかもしれない。
その誰かが、創作することに疲れたら
私達は、永遠に同じ場所で止まり続ける。
創作していたものを全部消したら、私達は消えてしまう。
それだけのモノなのかもしれない。
テーマ“微熱”
吐息が熱い。
身体がだるい。
目があけられない…
外気が冷たい。
頭が痛い気がする。
手を伸ばし、体温計を取って
熱を計る。
微熱。
微熱。
テーマ“はなればなれ”
戦場で男は言った
『俺、この戦いが終わったら結婚するんだ』
『そうか、それならなんとしてでも帰らないとな』
別の男がそう言う。
だが、結婚するといった男は、浮かない顔をしている。
『…結婚するんだ…』
『ん?望まない結婚なのか?』
『まあ、そういう事だな…他に好きな奴が居るわけでも、この戦いで、死にたい訳でもないけれど…』
『親が勝手に決めた婚約とか?』
『まあ……そんな様なものだ。』
『この戦いで自由を奪われているのに、戦いから戻っても自由が無い事に対して、落ち込んでいるのか?』
『…そもそも、俺は生まれた頃から自由なんか無かったから、それはどうでもいいんだ。』
『どうしても好きになれない相手との結婚だったりするのか?』
『……どうなんだろうな。好きになろうと思えば好きになれるのかもしれない。』
今更、結婚を嫌だと言っても、許されない事を男は知っている。
『逃げたらいいんじゃないか?もし、この戦いが終わって無事に帰れたとしても、知らない土地に行けばいいじゃないか。』
『逃げる……?』
『自由を知らないのなら、自由を知ればいい。無事に帰れたからって、実家に戻らなければならないなんて決まりは無いんだ。』
『だが…もし、同郷の者にバレたら』
『その時はその時で、知人に会いに行くとでも言えばいい。何、難しく考える事は無いんだから』
『………』
結婚を嫌がっている男は、顔を上げた。
そうして、この戦いが終わり、自分が生きていたとしたら、家族と決別しようと、決めた。
※戦い=戦争ではない。
※戦場は、戦をしている場所ではない。
とりあえず、簡単に死ぬことはない。
テーマ“意味のないこと”(小説です)
「私が思う意味の無いことは
今!生きている事です」
クラスで国語の時間に、自分の書いた
【自分が感じた事を作文にして発表しましょう】
とか言うくだらない授業の時に
声たかだかに、そんな事を発表した生徒が居た。
周りはざわついた。
先生は凍り付いた。
「命を軽んじている訳ではありません。
生きている事がくだらないと思っているわけでもありません。
そもそも、生きている事に何の意味があるのか、私は分からないのです。
地球を救うヒーローでも無ければ、誰かを救うお医者さんでも、誰かを裁く検事、裁判官でも無く、誰かを守る警察や弁護士でもありません。
将来の夢と言えるほどの目標も無く、ただ自堕落に生きているだけなので、今、私が生きている事はとても、意味のない事なのだと感じます。
この人が居なければ世界は滅びるくらいの意味がある人では無いので、
私は、今、生きている事に意味は無いのです。
ただ、生かされている人間のうちの一人でしかないのです。
でも、それでいいと思います。
無理矢理、何らかの責任を負わされそうになるのは、とても窮屈だと感じるので、特に生きてる事に意味がない人間の一人で私は満足しています。」
その生徒は、そう一気に読むと、お辞儀をして
着席した。
1拍遅れて、パラパラと拍手が起こる。
理解はしていないようで、首を傾げている生徒も居る。
とりあえず、発表が終わったら、拍手をしましょうという暗黙のルールで、拍手をしているだけだろう。
その後に、発表する人は、とても
やり辛いだろうなと思いながら、自分の番が来るのを待つ。
まだ、先だけど、とても発表し辛い。
あの発表を聞いてから、自分の作文を見返すと
なんて陳腐な文章なのだろうと、そう感じる程に、
あの人の文章は、私に刺さってしまったから。
テーマ“衣替え”
「今日暑いよねー」
そんな事言っていたあの日
「今日寒いよねー」
そういう日々に変わっていく
けれど未だに、何を着たらいいのか
分からなくなる日がある。
衣替え、難しい。