蒼月の茜雲

Open App

テーマ“はなればなれ”

戦場で男は言った
『俺、この戦いが終わったら結婚するんだ』
『そうか、それならなんとしてでも帰らないとな』
別の男がそう言う。
だが、結婚するといった男は、浮かない顔をしている。
『…結婚するんだ…』
『ん?望まない結婚なのか?』
『まあ、そういう事だな…他に好きな奴が居るわけでも、この戦いで、死にたい訳でもないけれど…』
『親が勝手に決めた婚約とか?』
『まあ……そんな様なものだ。』
『この戦いで自由を奪われているのに、戦いから戻っても自由が無い事に対して、落ち込んでいるのか?』
『…そもそも、俺は生まれた頃から自由なんか無かったから、それはどうでもいいんだ。』
『どうしても好きになれない相手との結婚だったりするのか?』
『……どうなんだろうな。好きになろうと思えば好きになれるのかもしれない。』
今更、結婚を嫌だと言っても、許されない事を男は知っている。
『逃げたらいいんじゃないか?もし、この戦いが終わって無事に帰れたとしても、知らない土地に行けばいいじゃないか。』
『逃げる……?』
『自由を知らないのなら、自由を知ればいい。無事に帰れたからって、実家に戻らなければならないなんて決まりは無いんだ。』
『だが…もし、同郷の者にバレたら』
『その時はその時で、知人に会いに行くとでも言えばいい。何、難しく考える事は無いんだから』
『………』
結婚を嫌がっている男は、顔を上げた。

そうして、この戦いが終わり、自分が生きていたとしたら、家族と決別しようと、決めた。


※戦い=戦争ではない。
※戦場は、戦をしている場所ではない。

とりあえず、簡単に死ぬことはない。

11/16/2023, 2:51:41 PM