Kanata

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4/28/2024, 3:38:34 PM






「今この瞬間が大事なの」

 わたしは言った。誤魔化すように取り繕った言葉。夜中に帰ってきたわたしに、彼が今まで頭を抱えてじっと待っていたような、悲しげな態度で疑問を投げかけてきたものだから。
 君のやるべきこと、できることは他にあるだろう?
そんな風に言われて、わたしは頑なになった。
 過去に縛れたくない。
 未来のために今を犠牲にしたくない。
 なんて浅はかな言葉だろうと自分でも思いながら吐いた。
「犠牲ではなく投資だよ」
 彼はまっすぐにわたしを見て言った。切実な目をしていた。
「自分の将来に自分で投資するんだ。自分を信じて。それは大切なことだ。それができることは幸せなことでもある」
 そう、幸せなことだ。余裕のある人間のできることだ。
「そんな刹那的な生き方をしていたら、君がいつか壊れてしまいそうで怖いんだ」
 彼の言葉に胸がぎゅっと痛んだ。彼はこう続けた。
「失いたくない」

 その瞬間、わたしはどこかで自分が長く生きる気がないのだと悟った。
 わたしを置いて先に逝ってしまったあの人を、自ら置いかけることもできず、かと言って長く生きる気もない。自然と終わりが早く来るといい。

 わたしは、それを口にできずただ彼の目を見つめていた。



『刹那』

4/27/2024, 3:52:16 PM


     朝起きたら
     鳥たちが鳴いていた

     美しい朝やけの中
     どこか彼方に羽ばたいていく

     昼には雨が降り出して
     どんより雲が流れていく

     冷えきった身体に降り注ぎ
     僕の頬も濡らした

     夕暮れ時にようやく
     薄明光線が差し込んで

     通りの木々がきらきらと
     煌めいて揺れている

     星々の溢れる夜空
     僕もいつかまた星屑に帰る


     喜びも
     怒りも

     たのしいことも
     かなしいことも

     この世にうまれて
     見て
     聞いて
     感じて

     それがどんなにつらいことでも
     僕にはそれがすべてだ



     『生きる意味』

4/26/2024, 2:22:19 PM

 SNSで誰かを批判する声を目にする度に、わたし自身の声が聞こえてくる。
「あんなことするなんて、有り得ない。思いやりないし、非常識だよね」
 それは昔の自分の声だ。
 他人が怖くて、批判されたくなくて、自分は正しいと主張する。
 その声はブーメランとなって返ってくる。わたしは時に、思いやりがなく、非常識なことをすることもある人間なのだ。当時批判の言葉を向けた人たちと同じで。
 ブーメランが自分の喉を突き刺した時、思うのだ。わたしは悪かもしれないが、そこに至った経緯がある。そしてそれは多くの人には理解されず、ただ悪として排除されるのだ。自分がしてきたことと同じように。


『善悪』