糸井

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11/30/2024, 11:55:51 AM

『泣かないで』

「でも、だって、離れ離れになっちゃうんでしょ?
もう、会えなくなるんでしょ?そんなのっ、て。」

拭っても拭っても溢れる涙に間に合わない。
私の頭の上にある貴方の手は暖かいのに遠く感じてしまう。いつもそうするように、彼は目線を合わせる為に少し屈んでくれていて距離は近いはずなのに。

貴方はあやすように優しく私を撫でてから頷いて、

「うん。ごめんね。でも、こうするしか無いんだ。
何をしてでも貴方に生きていて欲しいから。一緒に生きていたいから。
それに一生の別れでは無いよ。僕がそうさせない。
だから、信じて待っていて欲しいんだ。」

「…本当に?絶対迎えに、来てくれる、?」

「勿論。そのリボンをつけてくれている限り、何処に居たって見つけてみせる。約束はちゃんと守るよ。」

そんな風に言われたら、貴方の目で見つめられたら。断れるわけ無いじゃないか。例え可能性が低くたって貴方が言う事を疑う事なんて出来ないから。

「分かった。私、ちゃんとリボンと一緒に待ってる。なんなら貴方の事、探しにだって行くんだから。」

彼の悲しげな表情は緩み、少し微笑んで

「ああ。泣き顔も好きだけど前を向いてる方が君に似合う。君が探してくれるなら僕も負けないようにしないとね。」

撫でていた手で私の前髪をそっと上げて額にキスをする。涙の熱が貴方の熱で塗り替えられた気がした。もう、泣き顔も好きって何なの。貴方はよく私に敵わないと言うけれど、私の方がよっぽど敵っていないよ。

ねぇ、神様。今まで酷い目に遭って来た分、救ってくれたって良いでしょう?だからもし本当に居るのならどうか、彼を守ってあげて下さい。私の世界で一番大切な人を。大好きな人を。

11/30/2024, 3:19:13 AM

氷の刃みたいに風が全身に突き刺さる。

涼しくなってきたばかりだ、と思って油断していた。こんなに寒いだなんて。もっとちゃんと厚着すべきだったなぁなんて後悔するけれどもう手遅れだ。

適度に涼しく心地良かった秋は一瞬で、まるで最初から存在して無かったかのように跡形もなく過ぎ去ってしまった。

だけど。
冬は温もりを、貴方の暖かさをより一層感じられるから嫌いじゃない。

吹きゆく風に背中を押されながら、少し足早に歩いていった。

『冬の始まり』

11/28/2024, 11:14:12 AM

「…お願いだから返事をしてよ」

どうして私を置いていくの?
いつも私の知らない所で私の為に苦心して。貴方の自分を顧みない所がずっとずっと嫌だった。でも貴方の一番大切なのモノは私なんだって思えて嬉しくもあった。

だけど、それとこれとは話が別でしょ?
残される私の事を考えた事ある?
いや、貴方の場合は考えた結果なんでしょうね。

でも、でもこんなのって。あんまりじゃない。
少しくらい私に話してよ。何か出来たかもしれないし何も出来なかったかもしれない。だからといって話す事は無意味じゃないでしょ?だってそうじゃなきゃ納得できないもの。
ねぇ、私怒ってるの、許せないの。だから、目を覚まして応えて。

そうやって勝手に終わらせないでよ。

『終わらせないで』

11/28/2024, 9:08:02 AM

ねぇ、愛情ってどんな形をしてると思う?

私はね、パズルのピースみたいなモノだと思うの。
人から愛を貰えば自分自身の穴を埋めていける。

でも、全部が全部嵌るって訳じゃない。強く重い愛でピースを多く与えられたとしても、自分のピースまで捧げたとしても、カタチが合わなきゃ嵌らない。

まぁ、平たく言えば相性ってやつかな。恋愛なら二人で互いに足りないモノを補え合えたら幸せを感じるんだろうね。この人なら私の穴を埋めてくれる!って。
逆にどちらも穴だらけだったり、偏ってしまったりすると、不和の原因になってしまう。

現実は恋愛だけじゃなくて友愛だとか親愛だとか、単純じゃないから。もっと複雑にピースのやり取りは行われているし、その上で合う合わないが発生してくるんだけどね。

ちょっと話が逸れたかな。
何を言いたいかっていうと、自分が愛してるからって相手も愛してくれるとは限らない。そんな面倒な愛情の形が私は知りたくなったの。好奇心だよ。

パズルってのは私の一つの考えだから、貴方の考えも聞きたいなぁなんて…。思いついたら教えてね?

ひとまず私の話兼独り言はお終い。

これを聞いてくれた貴方がぽっかりと空いた隙間を埋める様な出会いを得る、もしくはそんな人達とより長く縁が続きますように。

『愛情』

11/26/2024, 1:09:39 PM

「…冷めない」
額に手をかざすとじわりと熱が移る。
少しずつだけど着実に蝕ばまれていくのに、自分一人じゃ出来るのは身を任す事だけだ。

それならもう抗う事を諦めてしまおう。面倒な事は捨て去って一直線に落ちていこう。
眠りにでも恋にでもどこまでだって。

『微熱』

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