しゅ

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9/10/2024, 3:23:20 PM

喪失感

私(悠)は喪失感に見舞われている。何もかも心から楽しめない。

事の発端は3ヶ月前の恋人(蒼依)との破局である。当時付き合っていた蒼依とは高校1年生の7月から1年ほど付き合っていた。
蒼依と別れて2日間くらいは落ち込んでいたが、友人(千尋)が励ましてくれて何とか気持ちを立ち直すことが出来た。
しかし、ここからが始まりだった。

励ましてくれた千尋は私の幼稚園からの幼なじみで、1番気を許している相手だった。千尋は私と蒼依の橋がけをしてくれた。千尋のおかげであんなにスムーズに付き合えたのだと思っていた。
だが、私は聞いてしまった。

蒼依「全然好きになれなかったよ笑 まあ何でも買ってくれて最高だったけど笑」
千尋「そう!悠って顔良くないからねー何でも買ってって言えば買ってくれるよね笑笑」
蒼依「友達にもそうなんだ」
千尋「うんまあ友達じゃないけど」
蒼依「え幼なじみじゃないの?」
千尋「親同士が仲良いからいやいやね」
蒼依「クズー笑笑」
千尋「お前も言えないわ笑」

この一瞬の会話で私の心はズタズタにされた。その場から離れたくても足が動かなくてずっと会話を聞き続けてしまった。

千尋「てかなんで急に別れたの?もっと色々貰っとけばよかったじゃん」
蒼依「普通に好きな人出来たから」
千尋「へーだれ?」
蒼依「千尋」
...
千尋「えーいきなりいつから?」
蒼依「んー2年になってからかな」
千尋「付き合う?」
蒼依「いいの?」
千尋「うん笑ちゃんと言って欲しい」
蒼依「そっか笑」
...
蒼依「好きです付き合ってください」
千尋「はいお願いします」


私は5時間目には出ないで早退した。
その日はずっと泣いていた。あんなに心を許していた千尋の本当の気持ちを聞いて裏切られたようだった。蒼依は私を好きではなかったことに傷ついた。そして、欲しいものを何でも買ってくれる人と思われていたのが悔しかった。私はあの一瞬で心がなくなってしまった。人を信じる心を見失ってしまった。

9/7/2024, 2:52:59 PM

踊るように

今ごろ彼女は何をしてるだろうか。
考えているだけで夜が明けそうなほど僕は彼女のことを考えてしまう。早く寝ないと。明日は大事なテストがあるのに。
彼女はちゃんと勉強したのだろうか。そんなことを気になりだしたらキリがない。今何時なのか分からないまま、僕は彼女を考えながら眠った。

朝起きると、彼女からLINEが来ていた。

「おはよー今日テストだよ勉強した?」

『おはよーしたよ』

「まじ?私何もしてないよ」

『また赤点?』

「どうだろうね」

『じゃあ学校で』

「はーい」

なんて会話をして朝からにやけてしまった。
心が踊るように動いて痛くなるほどだった。

9/5/2024, 3:35:06 PM

貝殻

海が見える家に住み始めた。
駅も近くないし、不便なことが多いが、何より海が好きなのである。どうしてこんなにも海が好きなのかは分からない。別に小さい頃に住んでいた訳でもないし、特別好きな海の生き物がいる訳でもない。何はともあれ一時的なマイブームだろうと何年か住んでみることにした。

最近の楽しみは海岸で貝殻を見つけることだ。傷がない綺麗な貝殻だと、海の声が聴こえるらしい。私はまだその海の声を聴いたことがない。だから聴くまではここを離れないと決めた。

ここに暮らし始めて1年が経った。私はまだ海の声を聴けていない。ほんとに聴こえるのかと思えるほど聴けていなかった。地元にずっと住んでる人に聞くと、海の声は海に認められた者しか聴けないらしい。それが本当だったら、私は海に対して何をすればいいのだろう。掃除などだろうか。
明日からは貝殻を見つけるのと同時進行で掃除もしていこうと決めた。この気持ちが海に見透かされていたら評価が下がるだろう。

そこらからまた1年が経った。そろそろ海の声を聴くことを諦めていた。すると大きな地震が来て、津波も来た。私はどうすれば良いか分からず家にずっといた。幸い津波はそれほど大きくならなかった。その3日後私は耳を伺った。今までで1番綺麗な貝殻から海の声が聴こえたのだ。それは私が想像したまんまの声であった。

9/4/2024, 2:50:29 PM

きらめき

彼はいつでも主人公のような人だった。
私は彼に恋をしていた。したくはなかったがいつの間にか
目が離せなくなっていた。
それが私の初恋だった。

彼の周りにはいつも人がいた。男女問わずの人気者だった。
私は彼が嫌いだった。彼の丸わかりのつくり笑顔が嫌いだった。
なのにみんな気づいていないようで、彼が本当に笑っているのだと思っているようで、私は怖かった。

彼は誰にでも分け隔てなく話す人だった。
だから、彼と話した人は全員嬉しそうな顔をしていた。
私はそれが嫌だった。
彼に過度な期待をしすぎて、落ち込む人を幾人と見たからだ。
私は彼に期待しても意味が無いことを知っていた。
なのに、私は期待をしてしまった。
失敗だった。私は頑固な気持ちを持っていなかった。
逆らおうともせず、ただ流されるまま期待をしていた。


幾人も期待させておいて彼は死んだ。


彼は病気であった。誰もそのことに気づいていなかった。
私たちは彼のどこまで知っていたのだろう。
私たちは全員、彼のことを表すとしたら同じ表し方をするだろう。
誰にでも分け隔てなかったのは、彼がみんなに同じ印象を与えたいと思ったからなのではと思ってしまう。

彼は空でもきらめき続けるだろう。

9/2/2024, 3:06:06 PM

心の灯火

最近の生活は淡々と過ぎていくようでつまらない。

そんな僕は初めて恋を知った。

明日も会えるかと願う心。どんな格好なら好印象か。もっとこうすればよかったと反省する夜。口臭がしないように念入りに歯磨きをする朝。一目見ただけで心が動く感覚。気づいてくれた時の口角。

こんなにも生活を変えてくれるのか、
僕の心の灯火がようやくついてくれた。

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