ゆいに

Open App
5/14/2025, 9:29:03 AM

「記憶の海」


柔らかい滑らかな…豆腐のようなそれに足首まで浸かっていた。
微笑みながら私は片足を引き抜き、そっと足下のそれを足指でまさぐった。

柔らかくて、温度が低くて、水よりは少し温かい。
そういう意味では海にも似てるかもしれないと思いながらくるくるとそれを掻き回してみた。ぬるぬるして、すべらかで、ちょっと何かのペットみたいだった。

「たくさんこのまま踏み潰しても良いんだけどな」

そう思いながら培養された貴方の脳の記憶の中を静かに歩いていった。

シナプスの森は記憶の海

貴方の人生の全て

5/7/2025, 12:59:29 PM

「ラブソング」


昨日窓辺であぐらをかき
コーヒー豆を選り分けながら考えていたんだ

あなたの為の愛
あなたの為の愛
けれどもそれは
コーヒー豆を選り分けるように

あなたが焦げていても選んだだろうか?
あなたが取り返しもつかないくらい破損していても選んだだろうか?

YESと言ってもNOと言っても
けれどもそれは
あなたを飲み干す為

今日自販機の前で何を選ぶか迷っていた
コーヒー、紅茶、緑茶に水
どれを選んでも良いけれど

けれどもそれは
あなたを飲み干す為

本当は喉なんか乾いてないのかもしれない
あなたを選びたいのじゃないかもしれない
機械的に指は彷徨い
サークルを描いて

あなたの為の愛
あなたの為の愛
けれどもそれは

機械的に指は彷徨い
サークルを描いて
意図的な偶然を待っている

「なんでも好きなのを選べば良い、どれを選んだって同じだ」とビール腹の男が忠告する

あなたの為の愛
あなたの為の愛
けれどもそれは

誰の為でもないかもしれない
日の当たる場所で
ただ飢えていたい

機械的に指は彷徨い
サークルを描いて
意図的な偶然を待っている

正解なんて欲しくはない
正しさならその指を引っ込めてくれ


機械的に指は彷徨い
サークルを描いて
意図的な偶然を待っている

5/6/2025, 12:29:04 PM

「ラブソング」

<LINE画面>

新人「ねむいです。」

部長「ゴールデンウィークに深夜アニメ観てたんだろう。明日からキツいぞ、早よ寝なさい。」

新人「今からお布団入ると上手くするとジークアクス始まる頃に目が覚めたり…」

部長「寝ろ!」

新人「リベンジ不眠なので[やったぞ感]が満たされないと眠れないんですよ…」

部長「お前はいつでも好きなことしかしてないだろ」

新人「ゲージが…ゲージが満たされない…」

部長「満タンになると必殺技が出るのか」

新人「ピーガガガ…
<ザッピングが始まる>


<隣宇宙、smile markのアパート、相変わらず宇宙猫Kはテレビに向かってSwitchをやっている>

K「近所のご婦人に情報を頂いて都市伝説センター始めたんですよね」

smile mark「人気なんだってね。どこまで進んだの。」

K「冒頭でおかっぱの可愛い女の子が押しかけてきてセンター長の部屋でファイルを探し始める所ですかね」

smile mark「もしかして全然進んでないんじゃない?」

K「一年Switchやっといてなんですが、ボクゲーム苦手かもしれません。」

smile mark「ゲームが好きか嫌いかわかるのに一年かけたんだ」

K「もしかしたら自分の中に隠れたツボがあるかと思って。あと何より、

テレビ画面観てないと自然、smile markと顔を合わせることになるので。」

smile mark「もしかしておれのことも」

K「苦手ではないですが自分の中のどこにツボが隠れてるのかわからないなと思って」

新人「そういう時は二人でジークアクス観たら良いですよ。」

<時空の歪みから無理やり現れたパジャマ姿の新人が無理やりDVDデッキのリモコンを操作してジークアクスの録画予約をして去っていく、口遊むのはplasmaとびだーしてゆけーうちゅうのかなーたーラブソングではないし宇宙猫と同居人の間には愛も友情も草木も生えない>

5/5/2025, 3:31:14 PM

「手紙を開くと」

ポストに入っていた封筒をペーパーナイフで切るとそこには何も入っていなかった。
指を2本入れ、距離を測るようにして開いて中身を探ってみたが、やはり何も入っていなかった。

それで、貴方が今も昔と変わりない生き方をしているのだと、納得したのだった。

口を開けた封筒の裏側はだらし無く開けた口のように赤い裏地で伸びている。
その舌を伸ばした口のままに屑籠に投げた。

私もまた変わり無いのだ。

その様にして、生きてきた。

5/4/2025, 4:23:47 AM

「青い青い」

ブルーとグリーンは違う色なわけですが古来日本では青も緑もそう変わらんだろうという認識でいた為に大体ざっくりあおいなと言えば若者であったり緑の苗木であったり青春であったりと概念がやや錯綜しているわけですが、緑に属するものは概ね土系に属するわけであり、ブルーに属するものは海系かはたまた空系に属することになりますが、海系と空系では海軍と空軍くらいにはちがう訳です。
海軍は基本艦隊を組み、空軍はゴールデンウィークにブルーインパルスがアクロバット飛行をしたりする。
根本、飛び立ったものは地面に落ちるかソフトランディングする宿命ですが、海というのは平面移動ですのでもしかしたら行ったまま帰ってこないということもあり得る。
飛び立ったものは地に落ちる宿命だというのが顕著な例の名画が「華麗なるヒコーキ野郎」でハッピーエンドをお望みの方にはおすすめしません。
行ったまま帰ってこない海というのは、「タイタニック」などは二重に帰ってこない例の名画ですね。
青いと若いとグリーンが混線している例が「青い山脈」ですが残念ながら私も観たことがありません。
5月には青い空と緑なす山々を見に観光に行くことが可能ですが、関東平野には山が無いという話を最近になって聞きました。

山が無い!

ややカルチャーショックですが構いません。
日本は島国ですので海がある。

海がない!

なんかそんな県もありましたね。
ややカルチャーショックですが構いません。
日本にはまだ空がある。

東京には空がない!

確認したわけではありませんがその場合ややカルチャーショックです。

川。川くらいならなんとか見つかるでしょう。それすらなかったら本当にカルチャーショックですが。

まあホームセンターでカーネーションを選ぶくらいの体験は共有出来るのではないでしょうか。
別に5月の青さを共有する必要は微塵もないのですが思わず共通項を探してしまうのがSNSでモノを書く時の最初の躓きなのかもしれません。

青また青。
僕の故郷は狭い空と低い山々と溝の様に水位の低い川の中に小魚の跳ねる平凡な限界田舎です。

Next