「渡り鳥」
渡り鳥は行く鳥なのか帰る鳥なのか?と話し合ったことがある。
野生動物のドキュメンタリーフィルムを観ていて、白鳥が飛び立って何処かへ向かって飛んでいた。
「あれは、行く鳥なの?帰る鳥なの?」
彼は少し困った様に思案して言った。
「基本は何処かに行くんだろうけど…去年は回り回って目的地から来たんだろうから…帰りとも言えるのかな…」
「ずっとハードル超えが止まらない陸上競技みたいね。」
「うん、でも、」
彼が横で言い淀みつつ、フィルムの白鳥を見遣った。
「飛んでる時は一匹ってわけじゃないだろう。誰かしか仲間がいて、集団で動く。
その、飛んでる時に常に横に仲間が居るなら、
それは、行くんでも帰るんでもなく、
その日が「今日」で、そこが「居場所」なのかもしれないよ。
私は白鳥から目を外して、彼の横顔を見ていた。
「ポップコーン作って頂戴、今すぐ。」
「もう21時だよ?」
「今から映画観ないと押し倒すよ。」
ポップコーンをひっくり返したみたいに彼は笑い出して、私のためにキッチンに向かって歩いて行った。
勿論、十数分後には、塩バター味のポップコーンを持って、彼は「帰ってくる」。
了
「君の名前を呼んだ日」
君の名前は呼ばない。ずっと、一生。
どうしても…」
国内文学が好きになれない。
矢鱈に自分を呪ったり卑下したり不幸のどん底は自分だけでございますと身の上話を延々と聞かされるかと思いきや、突如方向性を変えて他人をとっ捕まえて粗探しをしては、その人間を最底辺の人間の惨めな一生24時間見物ショーに仕立て上げたりする。
兎に角、娯楽というのは最底辺のことを指している思っているかのようだった。
汚いものしか見る物はないかのような浅ましさが好きになれなかった。
そうでなければイジメに不倫に格差にイヤミス、毒親に親友に嫉妬、つまりこの国には見るべき価値のある人間なんて生存してないかのような書棚が永遠に並ぶ。
さっくり言えば人間、それ自体が好きじゃないのかもしれない。
勿論、動物と自然を愛する自分は善良な人間で御座いますアピールにもウンザリしていた。
今でも国内文学はほぼほぼ好きじゃない。
「まだ知らない世界」
新人「未到達!」
部長「またそんな勢いだけで特に意味のない台詞で字数を稼ぐ…」
新人「なんとなく今の勢いでコナン・ドイルの『失われた世界』を思い出しましたがそれはともかくとしてですね」
部長「知らねえよなんだよ」
新人「新人、新人初めて一年超えましたが未到達の世界があります!」
部長「勿体ぶらずにその先を」
新人「部長が卒業したら嫌も応もなく私が部長になれるんですよ!」
部長「お前一人なんだから廃部に決まってるだろ。でもサザエさん世界なので永遠にお前は新人です。」
(背後からカサコソと物音がして以前ゲストキャラとして一瞬出て来たモブキャラの栗乃木さんがどう名乗り出たものか思案しながら挙動不審でこちらを見ている)(なかまにはいりたそうだ!)
「酸素」
「time performance」
久しぶりに呼び出されたので十字路に出かけたら、貧相なガキがギターを握って
「俺を死ぬまで最高のギタリストとして有名にしてくれ、死ぬまで完璧な天才として、死ぬまで完全な成功者として。
そしたら死んだ後は魂でも死体でもくれてやる」
と言うので商談成立。
奴に技巧と悪魔に売った用代理魂と途轍もない運を貸し出した。
道端で弾き始めて直ぐに観客が集まり、プロデューサーに拾われて気の合うバンドメンバー、条件の良いレコード会社、ツアーをやれば奇跡のような悪運で、ハリケーンが返って話題になり…
休暇中にカフェで可愛い女を見初めてそのままベガスで結婚、娘は3人全員健康、何事も問題なく…
『そろそろ刈り入れ時かな?』
と眺めていたら
奴の血筋はエルフだったのだ。
上手く騙されたもんだぜ。
end