「そのプライドには意味がない、という事は往々にしてあるけれど、残念ながら意地はあるんだよねえ」
とある金閣寺を焼いた男の証言
「大きな栗の木の下でー
あーなーたーとーわーたーしー」
「やめて下さいセクハラで訴えますよ!」
「その東京事変脳、そっくりお返ししますチェスナットツリーは由緒正しい海外の童謡ですなんでも下ネタで盛り上がるロッカーと一緒にしないで下さい。」
深夜のコンビニ、奇跡的にワンオペではない2人組、素子とマリコは次々に消えていくアイスクリームを補充している。
次々に消えていく理由はエルニーニョによって異常気象が観測され、熱帯夜が続いているからだ。令和組の皆さん、考えて見てください。11月ですよ?(肩をすくめ、手のひらを上にするジェスチャー)
私は堅実組の世代です。え、堅実組をご存じない、これだから令和世代はゆるい。
令和にはまだ緑とか牛とかいたんですもんねえ(そっとジト目で煽るジェスチャー)
これから30年後、堅実という年号が来ます。その頃には異常気象と疫病とあとなんかありとあらゆる、天使大発生以外のありとあらゆる災害が起きます。当然人口は減ります。堅実組の我々はあらゆるAIを駆使して同性間だろうが歳を取ろうが遺伝子の組み合わせで子供を作れる環境を整備しました。そして素子とマリコの間に生まれたのが、そう、この私。
私がタイムマシンを作り、素子とマリコに農業を勧める話はまたいずれお話しましょう…
(そっとタイムラインにアイスクリームを流す1人の青年、静かにフェイドアウトする)
「エルドラド」「それは黄金郷」
「房のある瞼を持つ王の意故に」「哀れここはドリームランド」
「1984」「ディストピア」
「探せそこに全てを置いてきた」「ラフテル」
「スウィフトが!」「行ったかのように見せたのはジパング!」
パシーン!ベルトを机に叩きつける音がしてソフトサディストの家庭教師、恵さんがキレ散らかした。
「アンタは!いつになったら理想郷の別名が脳から出てくるの!」
「令和の学生に理想郷という概念はありませんよ…」
「架空の概念でいいのよあんたら放課後いつも話してるでしょ一回死んで生まれ変わった先が別天地ですみたいなアニメの話!」
「あれは学校とヒエラルキーがないだけで理想郷じゃないですし縛りも大きいんですよ生まれとか特殊能力とかクラスが決められてるとか…」
「放課後までクラスの話してんじゃねえよ!ファンタジーくらい夢に遊べや!」
イライラと恵先生は話題を畳みだした。メタ発言をすると文章小窓が狭くて限界があるからだ。
「ね、誠くん。最後に聞くけど理想郷の別の言い方は?」
うーんと考え込んで誠は答えた。
「アキバですかね」
パシーン!恵先生が机を人叩きして叫んだ。
「内容が無いようで!」
「あ、先生それ僕が言いたかったなあ…」
了
どこまでも続く青い空に溶けていこうと思った空ソラ
居酒屋でバイト明けの薄明るい裏路地でライムを刻む新人ラッパー、角谷ミツルギである。
soraは空でもいいしラシソラソラドレミ、でもそらそらそら!でも良いが自分の中で決まるのは空ソラだ。溶けてしまう空へ「ソラ」と解き放つリリック。
そんな、方法論を語っても仕方がないしビール瓶の箱は重く腰が痛んだ。
明日はバイト休み、仲間で集まってmeets石井の作ったメロディに角谷のリリックを乗せる。つまり今が宿題の締め切り限界。湧き立て俺の魂、湧き出せ俺のリリック、韻を踏めライム、タイムアウトの前にYou!
…と無駄に単語を掻き立てるも角谷の魂に響くライムは降りてこない。おれにすら響かないライムがどうして石井の魂を湧き立てさせる。どうしたんだ俺の魂、ワ、石の様に堅物だったのか?
速度はラップの命だ滝のように浴びせろWord、の中に込めろ意味を超えた先にある俺の魂、に似たお前の魂、を揺らす為のライム。
「余計なことは考えつくんだよなあ…」
ーー方法論なんてジジイの繰り言か評論家の仕事だぜーー
感性だけで何者かにのしあがろうと企み持つ角谷ミツルギ、23歳。終わらない厨二病真っ盛りの青春が明けていく空に青く、淡く溶けていく。時間は更に溶ける。
了
お題破り〜君を知る旅
7年は軽く憧れて来たボレスワヴィエツ(ポーリッシュポター)のマグを買った。
ボレスワヴィエツ村で作っている陶器を表す、とTVで聞いた。
憧れ続けた丸いシルエット
憧れ続けた唇に完璧に沿った飲み口のくびれ
素朴な手書きらしき絵柄
完璧だ
その上で私はアフタヌーンティーの赤いコーヒーマグに(あ、アフタヌーンティーだからティーマグか)コーヒーと牛乳を注ぐ日が続いている。
ボレスワヴィエツマグに何を注いだら良いのか皆目わからないからだ。
コロンとしたポーランドのおばあちゃんが手書きで描いてそうな柄を持った紺のマグ…
君は何の特質を持っていて、何なら最高に似合うんだ…
こういうのが愛です。
コストをかけ、コストをかけるということ。
異論は認める