物心ついた時には父はいなかった。
小学生の頃から母は毎日違う男を家に連れてきた。
私のことなど気にもせず毎夜毎夜、嬌声を上げていた。
小学高学年になると殴られるようになった。
蹴られるようになった。
罵倒罵声なんて毎日だった。
それでも愛されようと頑張った。
でも結局は無理だった。
そして今。
自分はビルの屋上にいる。
柵は既に越えていて一歩踏み出せば真っ逆様だ。
これで死んだら母は寂しがってくれるだろうか。悔やんでくれるだろうか。愛してやれば良かったと思ってくれるだろうか。
きっと無理だ。死んだところで喜ぶだけだ。
「…寂しいなぁ」
そう言って自分はビルの屋上から一歩踏み出して空を飛んだ。
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寂しさ
冬は
一緒に
こたつに入ろう。
冬は一緒に
ストーブで暖まろう。
冬は一緒に
同じ布団で熱を分かち合おう
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冬は一緒に
君とする
なんてことなくてとりとめのない話が
1日で1番好きな時間
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とりとめのない話
うつ病はこころの風邪、なんていう言葉を聞いたことがある。
果たしてそうなのだろうか。
風邪をひいて、死にたいとか消えたいとかそこまで考えるのか。
うつ病は心の風邪なんかじゃない気がするのは私だけなのだろうか?
"せつ"という取り分け美人でもない女性がいた。
何もやらせても一般的で、飛び出た才能もなくただただ普通の女。
そんな彼女のどこに惹かれたのか自分でも分からない。
だがしかし、愛してしまったのだ。
話せば話すほど、見れば見るほど惹かれていく。
そんな日々が続いた頃だった。
せつが何者かに襲われてた。
しんしんと雪の降る静かな日だった。
それからせつは引き篭もるようになった。
笑顔も何もかも無くしてしまった。
そうした日々がどのくらい過ぎただろうか。
これもまた雪の降る日のことだった。
せつが、自ら命を絶ったのだ。
あたり一面、真っ白な雪の海に一塊だけ赤に染まった場所。
外で最期に雪を見ながら腹を、首を斬ったのだ。
まるで、"せつ"という雪が"雪"というせつに還るように。
数年後、自分は家庭を築いた。
それでもやはり冬になり雪が降ると思うのだ。
せつが、雪が憎くて、そして
愛していた、ということを。
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雪を待つ