名無しの権兵衛

Open App
2/26/2024, 10:35:18 AM

題:君は今

君が僕の元を去ってから、どれだけの季節を巡っただろうか。
この別れは、お互いの道を進む為の前向きな別れだったと、僕はそう考えている。
だから君も今頃は、あの日語り合った夢を叶えているに違いない。
ああ、努力家だった君の事だ。
きっと、叶えて幸せを掴んでいるはずだ。

僕の事は気にしないで、君はこれからも君の道を行けばいい。
あの日の君と同じように、今の君も笑っているだろうか。
どうか変わらず笑っていてほしい。
僕の事など早く忘れて、君を支える人達に囲まれながら、どうか笑っていてほしい。
ああ、優しかった君の事だ。
きっと、僕の願いを聞き届けてくれるはずだ。

君は今、どう過ごしているのだろう。
僕は今も同じ場所で、君が来るのを待っている。
かつて交わした約束を果たす日の事を、ずっとずっと待っている。

***

僕:「君」の大切な人、故人
君:「僕」の死を受け止めきれずにいた人
別れ:「君」が墓石にすがりついて泣くのをやめた事
同じ場所:「僕」の墓
語り合った夢:「君」が幸せな家庭を築く事
かつて交わした約束:「僕」の生前、「君」が結婚したら報告してほしいと約束していた

これらの設定を知ってから読むと、違う雰囲気に変わる文章。
知らずに読んだら、ただの未練たらたらな人の文章だけど。

何となくイメージしたのは、テニプリの白石のキャラソンである『エピローグ』と『追憶』。
「僕」は止まっているけれど、「君」は進んでいく。
そういう物語にしてみたかったんだ。

2/26/2024, 8:13:09 AM

題:物憂げな空

泣きたいと思っていても泣けぬまま
どんよりとした空は言う
「羨ましいよ、君たちが」
何故羨ましいのかと人は問う
すると空は溜め息ついてこう言った
「君たちにしか目がなくて
多くの雲は泣けぬまま
ああ羨ましい、羨ましい」

聞けば台風以外みな
泣くことすら許されぬという
笑うは太陽の仕事と言われ
笑みで誤魔化すことさえ出来ぬ
泣きたいと思っていても泣けぬまま
どんよりとした空は言う
「何も見たくないと言えるなら
それはとんだ贅沢だ
何も見たくないと思うなら
我らにその目をくれたまえ」

人から奪った二つの目
雲はようやく泣けたとさ
そうして目のない雲たちは
涙流して雨降らす

涙流して、雨降らす

***

台風以外の雲は雨を降らせる事が出来ない、そんな世界だったなら。
きっと誰かの目を奪ってでも、雲は泣くのだろう。

2/25/2024, 8:53:12 AM

題:小さな命

もしも足より大きな蟻がいたら
それを小さいと言えるだろうか
いやいや、きっと大きいと言う
たとえ自分の背丈より小さくても

それは確かに小さな命
蟻の背丈は人よりも
うんとうんと低いのだから
けれども大きなものがある
命の価値は大きなものである

どんなに小さな命でも
なくてはならぬ存在で
消えて構わぬ命など
一つたりともありはせぬ

虫はちょっぴり苦手だけれど
私の命と同じだけ
虫にも命の価値がある
身を守りたい時以外
潰さずそっと見守ろう

***

小5クイズで「足より大きな蟻」という妙に恐ろしい選択肢が出てきた。
こんなのに遭遇したら人生終わる存在として、他の選択肢よりもめちゃくちゃインパクトがあった。
もう一つの選択肢も良かったけど……恐ろしさだけ見たら、今回の小5クイズで最も強いインパクトを放つ存在だろう。

不思議なものだよね。
爪のサイズより大きな蟻すら、そんなに多くは見かけないってのに、恐ろしい存在という認識をしてしまう。
そんなに小さいんだから、指先でもプチッと出来てしまうのに。
その小さくて脆い命を前にして、怖いとか恐ろしいとか言っている。

でも命というものが持つ価値が人間一人と蟻一匹で等しいのなら、そりゃ恐ろしいと思って当然だ。
私が蟻を見かける時は、大抵一人でいる時だ。
そして蟻は複数匹歩いている。
命の価値をそれぞれ100とした場合、私は100で、蟻は合計すると軽く500を上回る。
そりゃあ、怖いと思うのも当たり前だ。

小さな命と言うけれど、価値に対して小さいと言っているのではなく、ただ単に生まれてからの日が浅い事を指しているのか、身体面が全体を見た時に平均より小さい事を指しているのかのどちらかだろう。
そう想定して書いた。