題:物憂げな空
泣きたいと思っていても泣けぬまま
どんよりとした空は言う
「羨ましいよ、君たちが」
何故羨ましいのかと人は問う
すると空は溜め息ついてこう言った
「君たちにしか目がなくて
多くの雲は泣けぬまま
ああ羨ましい、羨ましい」
聞けば台風以外みな
泣くことすら許されぬという
笑うは太陽の仕事と言われ
笑みで誤魔化すことさえ出来ぬ
泣きたいと思っていても泣けぬまま
どんよりとした空は言う
「何も見たくないと言えるなら
それはとんだ贅沢だ
何も見たくないと思うなら
我らにその目をくれたまえ」
人から奪った二つの目
雲はようやく泣けたとさ
そうして目のない雲たちは
涙流して雨降らす
涙流して、雨降らす
***
台風以外の雲は雨を降らせる事が出来ない、そんな世界だったなら。
きっと誰かの目を奪ってでも、雲は泣くのだろう。
2/26/2024, 8:13:09 AM