あふれて、こぼれて、流れた星が
いつかの僕の夢みたいだった
受け止める器もなく
ただ落ちていくのを
眺める事しか出来なかった
ありふれた夢だったんだよ
ヒーローになりたいとか
お金持ちになりたいだとか
大層なものから
くだらない事まで
それがいくつもいくつもあったんだ
今のこの僕に後悔は無いけれど
やっぱり少しだけ
寂しい、と思う
星が溢れる夜は息が詰まりそうで
この気持ちは受け止めなければと思った
忘れたくないんだ
あの時、並べて眺めたいくつもの夢は
僕にしか作れない光だったから
子供の頃書いた
あの時の手紙の内容は一つも覚えてない
10年後の自分にお手紙を書きましょう、
やけに張り切る甲高い先生の声だけ
ちょっとだけ覚えてる
丁度二十歳になる頃家に届きます、と
でも僕はその前にそこから逃げ出した
もう一生僕には届かない手紙だ
まだ社会の事を知らないくせに
早く大人になりたかったあの頃
弱虫で、良い子ぶって、天邪鬼
一人で生きてる気になって
あんな大人にはならないと
心の中では見下して
でもきっと
僕はちゃんと僕の幸せを願ってた
そんな手紙だった気がして
10年後の僕から届いた手紙に
幸せを願っただろうその拙い字に
応える事はもう出来ないけど
僕が死ぬ時、答え合わせでもしよう
僕という一人の人間が
幸せだったか、不幸だったかを
伝えたい
伝えたい事はもうないよ
やめたんだ、もう
このまま社会に飼い殺され
それでいいと思うから
羨ましくはあるよ
自分の意思を伝える人は
それがどんな皮肉だって
格好良く見えてしまうから
誰も耳を塞いではないのに
届かないと思い込んでる
そんな自分が情けなくなるけど
誕生日はいつもろくな事が無かった
だから僕は産まれてきてはいけなかったのだと
この日になるといつも思う
どうにかなるよ、と柔らかな色と
どうにでもなれ、と突き刺す光と
それは僕が作り上げた逆光だ
僕はその中心で真っ黒になったまま
自分が産まれた意味を探した
でも見つからなかったから
何もかも諦めてただ息をしていた
振り向けば その光に飛び込んでしまえば
楽になれるのに
どうにかなるから、と柔く弾かれ
どうにでもなっちまえ、と突き放され
それが僕の作り上げた逆光なら
強くなれるかな、
僕はまだ、強くなれるかな
ただひたすらに走らせていた
そのペン先がふと止まった
書き続けなければいけないのだ
早く、早くこの物語の結末を書き切って
終わらせてしまいたいのだ
僕の手を、僕自身の事も
楽しかった事も嫌だった事も
同じだけあった
希望も失望も両手から溢れるほど
抱いてきた
だからなんなのだろうか
得たものと失ったもの
どちらが多いかとか
涙の数と嘘の数を
足したり引いたり
愛と金はどちらが重いか
壊れた天秤とにらめっこして
面倒くさくなって
何度もペンをへし折って
酸いも甘いも味わって
どんな後味でも僕には無意味で
物語の結末も決められないまま
巡る四季の色を眺めて
その中で僕は
ただ、ただ過ぎた日を想うのだ